2007年6月21日放送「クローズアップ現代」
NHK「沖縄戦集団自決」番組の偏向度

藤岡信勝(自由主義史観研究会代表・拓殖大学教授)

6月21日午後7時30分からNHK「クローズアップ現代」で、「『集団自決』62年目の証言−沖縄からの報告」が放映された。この番組には、私と自由主義史観研究会のメンバーが取材協力した。1回目は5月24日、つくる会の事務所で、2回目は6月7日、自由主義史観研究会の事務所で取材を受けた。2回目の取材はカメラが入り、私のインタビューのあと、研究会の編集会議の様子を撮影した。

出来上がった番組は、驚くべき偏向番組であった。まさかこれほどとは思わなかったというのが正直な感想である。放送法第3条の2には、「2 政治的に公平であること」と「4 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること」を放送事業者に求めている。これに照らして、上記番組はどこに問題があったか検証してみよう。

第1に、番組の偏向度は量として現れる。「沖縄集団自決」はいうまでもなく「意見が対立している問題」である。こういう問題の場合、当然両方の主張をきちんと報道しなければならない。主張を取り上げる時間は、理想的には「5対5」になるべきだが、放送局や番組制作者のスタンスがどうしても反映するから「6対4」程度になるのはある程度やむを得ない。さらに大目に見て「7対3」でも、「3」の側の論点がきちんと提示されていれば、基準を甘くして許容範囲とすることも場合によっては可能であろう。これが「8対2」では、もう救いようがない偏向番組である。

さて、上記の番組はどうだったか。「集団自決=軍命令説」に反対の立場、すなわち文科省の検定を当然のこととして支持する立場の映像は、梅澤隊長の大江健三郎に対する名誉毀損裁判提訴の際の映像が30秒、私と自由主義史観研究会の映像が合わせて40秒、合計1分10秒前後の時間しか充てられない。番組全体が25分だから、これでは「9対1」以上のひどい落差である。

第2に、「できるだけ多くの角度から論点を明らかに」などしていない。過去20年間、「軍命令説」が教科書に書かれてきたのは、梅澤、赤松の両隊長が住民に集団自決を命令したとされてきたからだった。それは、実は、遺族援護法による年金を受給するための嘘の証言によるものであったことがわかり、「軍命令説」が完全に崩壊したという近年の動向を受けて、文科省は遅きに失したとはいえ、今回検定で初めて意見をつけたのである。この最も重要な論点が番組では完全にネグレクトされている。このポイントがわからなければ、検定意見の背景は全くわからない。番組は、そうしてわからないようにしておいた上で、「突然」という言葉を2回も出して、検定が異常なことであるような雰囲気を作り出している。驚くべきことである。

第3に、番組の論理の立て方そのものが間違いである。「日本軍によって」という「強制」の主体が検定で消されたから、「住民が追い込まれて」と書かれていても、「誰によって」という主体が抜けてしまった、というナレーションが入る。「誰」と名指そうとすること自体が間違いである。当時は日本全体が米軍に攻め込まれたら集団自決が起きかねない状況だった。沖縄だけが特殊ではないのだ。私より一回り、10歳年上の友人は、戦争末期茨城県に住んでいたが、もしそこに米軍が侵攻してくれば、母親は幼い自分を殺したうえで自らも自決したであろうと語る。私の長姉などからも、米軍が来たら女性は強姦されて殺される、男性は局部を切り取られる、といった話が広く信じられていたことを私が小さい頃から何度も聞かされた記憶がある。

もし、どうしても「誰」の責任かを問いたいのなら、直接の命令を下した人物が浮上することになる。座間味では村の助役が、渡嘉敷では村の村長が住民に自決命令を下したのだから、かれら行政の責任者にこそ直接の責任があることになる。もちろん、私はそんな責任追及に意味があるとは全く思っていない。状況全体のしからしむるところだったというべきだからである。

第4に、番組では軍が手榴弾を積極的に配って自決に追い込んだという「証言」を繰り返し流して、「広義の」(?)「軍命令説」を何とか維持しようとしているが、ここでも、手榴弾を積極的に求めたのは、地元の男性で組織された防衛隊であり、彼らが住民に手榴弾を配ったのである。それでも足りなくて一人に1個など当たらなかった。住民は手榴弾など自決の手段を隊長に求めて、断られていたのが真実である。今、糾弾の対象となる「日本軍」なるものは存在しない。だから、それを悪者にしておけば精神の平衡が保てるのかも知れないが、少し考えればわかるように、それは全て戦後的な後知恵の解釈である。沖縄の人でも、心ある人でそういう道理のわかる人はいるはずだ。そういう人も一切登場させない。

以上、いくつかのポイント指摘した。まだまだ書かなければならないことが沢山あるが、今回はここまでとして、近々続きを書くことにする。最後に、放送法違反でNHKを告訴することも検討していることを付け加えておく。

緊急特集・沖縄集団自決:虚構の軍命令へ
軍命令が無かったとする生存者の証言等についてもご紹介しています。

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