授業報告
国を追われたユダヤ人を救った日本


渡辺 毅(三重県公立中学校教諭)

【ねらい】
第二次大戦中各国から冷遇されていたユダヤ人に対し救いの手を延べた当時の日本人たちの姿から学び、誰に対しても公正・公平な態度で臨み、差別や偏見のない社会の実現に努めようとする意欲を育てる。


発問1

こんな場面を思い浮かべてください。

タケシ君がひとり廊下を歩いている。とふと、教室を見るとクラスのガキ大将マサオ君が、ユウジ君の机や教科書にマジックインキで「バカ」などど落書きをしている現場をみつけました。これを見たときのタケシ君が思ったことを、自由に書いてみましょう。

◇右の場面を書いたマンガを用意し、タケシ君の心の中の吹き出しに記入させる。

(生徒の反応)
・おや、何してるんだ?!マサオのやつ悪いことしてるな。
・かわいそうなこと、されてるな。注意したいけど、相手がマサオ君だからなあ。
・早く行って、やめさせなくちゃ。
・やめさせたいけど、恐いから無理だな。

説明1
「イジメは正しくない。救いたい」と思っていても、それを口に出して実行することはなかなか簡単ではありませんね。しかし、たとえ難しくとも、勇気を出してそれを実行した人たちがいました。しかも、世界中からイジメられていた人たちを、「それは正しくない」と言って救い出した人たちがいたのです。

さて、前の時間に、ユダヤ人がヨーロッパの国々でつらい生活をしていたということを学びました。ユダヤ人たちはヨーロッパ中でイジメられていたんですね。特にひどかったのがドイツのヒトラーの時でした。ヒトラーはユダヤ人皆殺しを計画していました。

当時のドイツはオーストリア、ポーランド、ハンガリー、チェコスロバキア、デンマーク、ノルウェー、オランダ、ベルギー、ルクセンブルク、フランスを侵略していきました(ヨーロッパ地図を示して確認)ので、それらの国々にいたユダヤ人たちは、虐殺から逃れようと大量にそこから脱出しようとしました。

しかし、ヨーロッパのほとんどの国々はドイツに支配されていて、逃げるところがない。ヨーロッパの港から出て行こうにも、ドイツ軍の飛行機が待ち受けていて船が撃沈されてしまう。イギリスやアメリカ、そして中立国のスイスさえもユダヤ人には冷たく、逃げ場を求める彼らを積極的に入国させて救おうとはしませんでした。


発問2

そんな中、これ(杉原千畝が発給したビザを示す)を手に入れることで、一万人以上のユダヤ人がヨーロッパを脱出して助かることができました。約三万人のユダヤ人を救ったこれ(ビザ)は、いったい何でしょう。見てわかることを何でもいいから発表しましょう。 

(生徒の反応)
・英語のような文字が書いてある。
・漢字が書いてある。
・カタカナで「カウナス」と書いてある。
・「杉原」と読める。
・「昭和十五年八月十九日」と読める。
・日本と関係があるのかな。

説明2
これは、ビザといいます。「入国を許可する」という証明証です。みんなが気づいてくれたように、これは日本が発行したビザです。当時ヨーロッパの各地に日本の「領事館」という役所がありましたが、それは日本の領事館はやってきたユダヤ人たちに「日本への入国を許可する」というビザを出してやり、日本へ逃げていくことを助けてあげました。(ヒレル・レビン『千畝』三三一頁)。

この方法で生きのびられたユダヤ人、約三万人にものぼったといわれています。世界中からイジメられているユダヤ人を助けてあげたのは、日本人だったのです。ヨーロッパの日本領事館の中でも、もっとも多くのビザを出して六千人以上のユダヤ人を救った人として有名なのが、この人、杉原千畝(黒板に写真を貼る)です。彼は、ユダヤ人がおカネをもっていなくても、ビザを書いてやったそうです。

また、この人、樋口季一郎(黒板に写真を貼る)という軍人も、ヨーロッパから逃げてきた数千人のユダヤ人を満州国という所(地図を示す)に入れてあげて救出しました。
しかしユダヤ人に優しかったのは、この杉原や樋口などの一部の人たちだけでなく、日本の出入国の管理官も警官もものすごく寛大で杉原が書いたいいかげんなビザや偽造ビザまで承認にしてくれたそうです。(小林よしのり『新ゴーマニズム宣言』『サピオ』平成十二年五月十日号七五頁の一コマを拡大して黒板にはる)

指示1
それでは、今日の授業のおさらいをしましょう。今から配るプリントを読みます。 
(プリント『道徳の教科書』七三頁ー七四頁)を範読する。

指示2
今日の授業でわかったこと、思ったことを書きましょう。


◇数名を指名し、感想を発表させる。

・ユダヤ人に同情的であったとされる国ですら入国を制限したのに、日本はいいかげんなビザや偽造ビザでも入国を許したのはすごいことだと思いました。もっと日本人のいいところを知りたいし、私もよいことを実行できる人になりたいです。
・イジメられている人を助けるというのは難しく、もしかしたら自分までイジメられるのではないかという恐怖があります。しかし、世界中でイジメられていたユダヤ人を助けた日本の勇気はすごいことだと思います。まちがったことをそのままにせず、イジメは正しくないと訴え、今日勉強した二人の人物のように勇気ある行動のできる人になりたいとおもいます

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