出前授業
本当の国際人とは

出前授業承ります!


篠原寿一(新現役ネット「教育を考える懇談会」代表)

皆さん、こんにちは。私は篠原寿一といいます。今から五十年前に小学校を卒業しました。さて、突然ですが、皆さんに質問します。

▲私の職業は何だったでしょうか。

 A 学校の先生
 B スポーツ選手
 C コンピュータの技術者
 D 小説家

質疑応答しながら子供たちと打ち解ける

▲自己紹介
  私は、コンピュータの技術者(エンジニア)をしていました。(SEといいます。)コンピュータは一台でいろいろなことができます。
テレビはテレビ番組を見るためだけ。電卓は計算をするだけ。電話は遠くの人と話をするだけ。ファックスは文章や絵を送るだけ。ワープロは文章を活字にするだけ、ゲーム機はゲームをするだけ。
でも、コンピュータはこういうことが全部できます。また、その他、インターネットができたり、銀行でお金がおろせたり、駅の自動改札ができたりします。
               
一台でいろいろなことができるのは何故でしょうか。分かる人、手を挙げて。

コンピュータはもともと(コンピュータというくらいですから)計算をする機械でした。会社の社員の給与の計算、調査の集計、数学の難しい数式の計算などに使われていました。今皆さんが使っているコンピュータも勿論計算ができます。皆さんが毎日使っているコンピュータの計算スピードはどの位だと思いますか。
たとえば七桁の掛け算(または割り算)を皆さんはどのくらいのスピードで計算できますか。
たとえば一分としましょうか。今皆さんが使っているコンピュータは大体七桁の掛け算(または割り算)を一秒間に5000万回計算ができます。        
               
▲これは一分掛かる人の何倍でか計算してみましょう。

▲30億倍ですね。30億人が一緒に一分掛かって計算する量を一台のコンピュータは一秒で計算してしまう。そのくらい早いのです。あるいは、コンピュータが一秒間で出来る計算を一人の人間がやるとしたらどれ位掛かるでしょうか。
5000万×1分=5000万÷60時間=5000万÷60÷24日=5000万÷60÷24÷365年、約100年(飲まず食わず、しかもコンピュータは計算を絶対に間違わない)。

皆さんが普通に使っているコンピュータはこの位の計算能力があります。
ここで問題をやってみましょう。

▲□の中に文字を入れてください。漢字でも、ひらがなでも、カタカナでもかまいません。

コンピュータは自分で何をしたらよいか分からないので□は、コンピュータに命令をします。この命令を□□□□□といいます。

▲このプログラムによってコンピュータはゲーム機になったり、インターネットをしたり、銀行の現金自動支払機になったりするのです。

このようにコンピュータは物凄い能力を持っているのでいろいろな分野で使われますが、どのような所でどんな仕事をさせるかは全て人間が設計して決めます。いろいろな所でいろいろなものと組み合わせて動くものをシステムといいますが、それを設計して動くようにする人をシステムズ・エンジニア(SE)というのです。たとえば皆さんがインターネットを使うには、皆さんのコンピュータ一台一台を通信線とつなぎます。また、パソコンとプリンターをつなぎます。しかし、ただつないだだけでは動きません。そこにプログラムを入れて(書いて)うまく動くように命令します。このような複雑な仕事をコンピュータにさせるには、命令の数は100万命令とか200万命令になります。

一つの命令を一行で書きますから100万の命令は100万行、ノート一ページに60行書けるとすると、1,000,000÷60=1万7千ページ。
ノート一冊100ページとすると170冊くらいになります。
これだけのものを一人で書くのは大変ですから、チームを組んで分担します。
それでも一人30冊程度、場合によったら50冊程度は書きます。
命令は人間の言葉ではなくコンピュータの分かる言葉を使いますが、英語にかなり近い言葉です。

コンピュータは歩けませんが、最近コンピュータに手足をつけたものが出てきました。さて、それは何でしょう。・・・・・それがロボットですね。(ロボットの頭の部分はコンピュータで出来ています。)

・・・・・(ここまでで、コンピュータの概要を説明する)・・・・・

▲私は三十歳の時に、このプログラムを書く仕事でフランスに約一年滞在したことがあります。日本人は誰もいませんでした。一緒に仕事をしたのはフランス人、イギリス人、イタリア人、オランダ人でした。会話は英語でした。仕事も順調にスタートを切りましたが、思いがけないことが起こりました。
どんなことだと思いますか。

・・・・・

病気になってしまったのです。

食べ物は肉ばかり。日本人の主食はお米ですが、ヨーロッパ人の主食はパンではなく肉なのです。それに毎日ビールやワインを飲み放題、日本より値段が安くておいしいのです。それに自分では気がつかないストレスもあってお腹の具合を悪くし、毎日お腹が痛むようになりました。ある程度我慢していましたが遂に我慢出来ないほどになり、お医者さんに行くことになりました。

ところが私は英語が出来てもフランス語は出来ない、お医者さんは勿論フランス語と英語は出来ても日本語はできません。私は、仕事をするための英語は不自由ではありませんでしたが、病気の言葉は何も知りませんでしたので、身体がどういう状況かという説明ができない。腸の辺りがシクシク痛んでいたのに昨夜は猛烈に痛くなった、トイレに何度も駆け込んだ、などというニュアンスまではフランス語では勿論英語でもまったく伝えられませんでした。そこで私は和英辞典と英和辞典、お医者さんは英仏辞典と仏英辞典を使って、お互いに辞書を見せ合って会話をしました。

日本で具合が悪くなった時は気軽にお医者さんに行けますが外国では非常に心細い思いをします。また、日本に居ればおかゆを作ってもらったりしていろいろ面倒を見てもらえますが、外国ではすべて自分ひとりでしなければなりません。

このような経験をすると、段々日本っていい国だなあという思いが強くなります。友達は大勢いるし、言葉に不自由はないし、保険制度がしっかりしていて安いお金で診察してもらえるし、何よりも家族がいていろいろ面倒を見てもらえるという当たり前のことが、実は非常に有難いことなのですね。

外国で、一人で暮らしてみるとそのことがよく分かります。

・・・・・

ところで外国で仕事をする場合、最も大事なことは相手から尊敬されることです。尊敬できる人と一緒に働けるのは楽しいからです。尊敬できる人かどうかはいろいろなことから判断されます。

▲たとえば、フランスではどちらの日本人が尊敬されると思いますか。

A フランス語がしゃべれて、フランスのことを良く知っている人
B フランス語はしゃべれないけれども、日本のことを良く知っている人

・・・・・

日本人がフランス人以上に流暢にフランス語を喋れるのは無理ですし、フランス人以上にフランスのことを知っているのはありえないことです。自分のこと、自分の国のことを良く知っていて、それに誇りを感じている人、そういう人が外国では尊敬されます。あるいは、日本人ってこういう人なんだ、日本人は自分たちにないものを持っているな、と分かってもらえると尊敬されるようになります。

すると仕事はスムーズにゆきます。クラスの皆さんは同じ日本人ですから毎日の生活習慣や約束事は言わなくても分かりますね。しかし外国人同志では考え方も習慣もかなり違います。その違いを分かり合うと、お互いに相手の国をもっと知りたいと思うようになり、相手に対しても興味を持つようになり、それが人間関係を円滑にします。

・・・・・

たとえば、日本の歴史とフランスの歴史は全然違います。
日本には二千年以上前から天皇陛下がいらして、国に大きな問題が起こると天皇陛下を中心にして国がまとまりました。
フランスでは今から約二百年に革命が起こり、王様は首を刎ねられて殺されてしまいました。しかし、貴族の家柄は残っています。現在フランスでは、三千五百くらいの貴族の家柄があるそうです。
日本には現在貴族と呼ばれる人たちはいません。しかし、皇族といわれる人たちがいますね。日本の皇族は皆天皇家と親戚関係にあります。ヨーロッパの貴族は必ずしも王様と親戚関係はありません。ヨーロッパの王制と日本の天皇制は全然ちがうのですね。

そういうことを知ることによって、この世界にはいろいろは人たちが暮らしている、いろいろなものの考え方の人たちがいる、それをお互いに理解しあうことが大切だということが分かります。そういうフランスの文化、伝統をよく知っていてそれを大切にしている人は自然に信頼することができ、尊敬もできるようになります。

私もよくフランス人から日本のことを聞かれました。

「禅」といいうものはどういうものか。
「わび・さび」とはどういうものか。
「歌舞伎」とはどういうものか。「能」とはどんなものか。

日本にはこのような、(外国にはない)日本独特の優れた文化があります。私はフランスで一年暮らしてみて、日本人が本当の国際人になるには、つまり、フランス人を初め、外国人から自分が一人前の国際人として尊敬されるには、日本の文化や伝統をよく知っている、日本人であることに誇りをもっている、日本という国が好きだ、という要するに自分が真の日本人であることを示せる時に本当の国際人として認められることを知りました。文化:地域の環境に合わせて生き続ける、また、それを楽しむ知恵・価値観 伝統:先祖から伝えられ、自信と誇りをもって受け継ぐもの英語が多少上手に話せてもイギリス人やアメリカ人以上になれることはありませんし、ゼスチャーがアメリカ人のようであっても、アメリカ人以上に見られることはありません。何よりもまず、日本人としての自分をしっかりつくること、学校の勉強や日本人としての礼儀作法を身につけること、これらが非常に大事なことなのです。本当の国際人とは本当の日本人であることなのです。

※篠原さんは、現役時代日本アイ・ビー・エム社員として世界を舞台に活躍しておりました。この豊富な経験を生かし、次代を担う小・中学生に日本人としての気概をもってほしいと願い日々奮闘しております。

★篠原さんが出前授業でのさらに力を入れているテーマ:
・基礎学力の重要性
・自分探しをする前に、まず最低限度身につけるべき学力が必要であることを説く。
・何をやるにしても最低限の読み、書き、計算ができなければ話にならない。
・日本人がいかに恵まれた生活をしているか、若者がいかに平等をはき違えているか、まず、足元を固めなければ何も始まらないことを説く。

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