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授業報告
元号って何だ

高橋智之(岩手県公立小学校教諭)
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1、はじめに
普段あまり意識せずに平成〜年と言ったり西暦〜年と言ったりしているが、そもそも「元号」とは、どのようなものなのだろうか。
(1)元号とは「われわれの時代」を実感させる制度
「明治」「大正」「昭和」「平成」など。ある時点から起算して年数を数えるための特定の称号を、元号といいます。
心理学者の小田晋氏は、元号について、「我が国が元号制度を採用しているという事実は、多くの日本人に、天皇の治世を『われらの時代』であると考える前意識的な習性を生んでいる」と言っています。
元号制度は、日本の象徴である天皇との絆を国民が実感し、日本全体が「われらの時代」として同じ価値観や理想のこもった時間を共有する上で最適な制度と言えるでしょう。これは、歴史的に平和や民族の安定を願って定められ、千年以上も歴史の中で、民間の中でも使用されてきた超国宝的な無形文化財であるともいえるでしょう。
元号は、以前、朝鮮やベトナムなどでも使われていましたが、現在では消滅しています。中国でも清朝の滅亡とともに元号もなくなりましたので、現在これが使用されているのは世界で我が国だけになりました。
(2)世界の各地にも独自の紀年法がある。
今日我が国では、広く西暦が使われていますが、これはキリスト誕生年を紀元とするキリスト教暦です。しかし、世界には西洋暦の他に、数え切れないほどの暦が存在しますし、西暦を使わない国もあります。世界の紀元法は、西暦で統一されるものではなく、その国の宗教や文化によって独自の暦が使われています。そして、この独自の紀年法を使うことが、その国の自主性と独立がしっかり認識され、文化的・法的な秩序が保持されている証にもなるわけです。我が国では、最も古く最も長く継続してきている独自の元号という紀年法を大切にしていくことが、私達日本人が長く一貫した歴史を共有できる最善の方法だと思います。
「明治村」「大正デモクラシー」「昭和の懐かしのメロディー」といった元号の入った名称を聞いたとき、私たち日本人は共通したその時代のイメージを抱くことができます。西暦ではとらえきれない、日本人独自の時代感覚というものが私たちの心の中には歴然とあるわけであり、こうした感覚を共有した同じ国民という意識を持って生きていくということはとても大切なことだと思います。
2、元号の基礎知識
(1)元号はどんなときに改元するのか
年号を改めることを改元と言います。改元には、@代始(天皇の即位)改元、A祥瑞(めでたい前兆による)改元、B災異(天変地異や戦乱などによる)改元、C革命・革令(辛酉と甲子の年には大変革が起こると言う讖緯説による。)改元があります。
歴史上、天皇御一代において、年号が何回か上記の理由によって替えられるということがありましたが、明治天皇のご英断により、元号は一代につき一つと改められました。
(2)年号はいつから始まったのか
我が国最初の元号は、孝徳天皇(第三六代)のとき「大化元年」(六四五年)です。日本の国に、大々的な変化を与えようといった理想を持たせて制定された元号です。途中、元号が使われなかった時期がありましたが、文武天皇(第四二代)の「大宝元年」(七〇一年)以来、現在の「平成」までの千三百年以上、中絶することなく続き今までに二四七個あります。
(3)元号はどうやって決められるのか
「大化」から「昭和」までは天皇の大権に基づいて決められました。手続きを見ると、まず、勅命を受けた大臣は文章博士らの元号案を勧申されます。文集博士等は中国の古典に基づいて二文字からなる佳字を選び、典拠を付して録上すると、大臣以下参議等はその案文について審議します。その際、勧申の文字について問題点を指摘し、また勧申者からの反論などが行われます。これを難陳といい、先例の有無、佳字かどうかなどが審議されます。この後、候補を絞り込んで上奏し、裁可を得て詔書を以って交付されます。
これに対し「平成」は、国民主権により内閣によって決められたはじめての元号となりました。決定までの経過を見ると、内閣が中国文学者、中国哲学者ら全国で数人の元号候補案作成者に電話で連絡し、新しい元号の案を提出してもらいました。それをうけて首相官邸で元号懇談会が開かれ、新しい元号は「平成」で意見が一致。ついで、衆参両議院の正副議長4名の意見を求め異論が出ず、閣僚懇談会にかけられました。ここでも異論が出ず懇談会はそのまま閣議に切り替えられ、新元号が「平成」に決定し、官房長官が記者発表をしました。
「平成」は「史記」と「経書」を出典とし「国の内外、天地に平和が達成される」という意味を持っています。
3、授業記録
(1)目標
・元号とは長い歴史を持つ伝統文化の一つであることを理解する。
・元号に込められている願いについて考えることを通して元号に愛着をもてるようにする。
(2)授業の実際(●は教師の発問、指示、◎は説明 ○は児童の発言、反応)
@導入
●今年は何年ですか。
○18年
●ただの18年?
○平成18年
◎平成という時代が始まって今年で18年目という意味です。
●平成の前はなと言っていましたか?
○昭和
●その前は?
○明治 大正
●ここら辺から怪しくなってきたぞ。
○大正
●その前は
○明治
●このような時代の数え方をまとめて何と言うか知っている人はいますか。
◎(誰もわからず)まとめて元号と言います。今日は元号について勉強していきます。課題を書ましょう。
課題:元号ってなんだろう。
A元号についての基礎知識
●元号について何問かクイズを出します。理由がある人は理由も発表してもらいます。勘でもいいです。答えないというのはダメです。
第1問。元号はいつから使われ始めたのでしょうか。ノートに予想を書きなさい。
(資料1を提示)
●元号は、約何年前から使われ始めたのでしょうか。
1、明治時代から(約一四〇年前)
2、江戸時代から(約四〇〇年前)
3、鎌倉時代から(約八〇〇年前)
4、飛鳥時代から(約一三〇〇年前)
○天皇が考えたんですか。
●そうだね。天皇が考えたかもしれない。そのように推理して考えてみましょう。
○天皇はいつからいるんですか。
●天皇陛下は大昔からいます。
●正解は4番です。
○え〜。(驚き)
◎正確には、一三六一年前です。千年以上前からつかわれてきたでしょ。元号が使われるということは、日本が独立した国であるという一つの証拠でもあります。昔、元号を使っていた国もあったのですが、王朝が滅んだりして、今、元号は使われているのは世界で日本だけです。
●第2問。元号はどんな時に変わると思いますか。ノートに書きましょう。
○天皇が変わるとき。
●なるほど。天皇が変わるときっていつ?
○死んだとき。としになったとき。
●としになったときと死んだときでは意味が違うね。
○死んだとき。
◎天皇陛下が亡くなられたとき。難しい言葉で崩御と言います。この言葉も覚えておくといいですね。天皇陛下がなくなられたときだけというのは最近のことです。明治の前は江戸時代ですが、江戸時代にも元号はたくさんあります。明治の前は、讖緯説という占いのようなもので、悪いことが起きたときとか逆にいいことがありそうだといったときも元号を変えているときもあります。今は、天皇陛下が亡くなったときだけです。
●第3問。元号は誰が決めているのでしょうか。(資料2を提示)権力者と難しく書いたけど、例えば江戸時代は、徳川家康が一代目で、代々続いた徳川将軍家のことです。
●元号は誰が決めるのでしょうか。
1、天皇
2、その時代の権力者
3、占い師
◎正解は天皇陛下です。2番を選んだ人も結構いたでしょう。その人の気持ちもよくわかるんです。その時代の権力者、例えば、江戸時代に将軍に逆らった大変なことになった。(そうそうの反応)
その人が決めてよさそうなもんなんだけど、天皇陛下はちょっと別な存在だったんだですね。そいう権力者であっても、国の中心、まとまりは天皇陛下だという気持ちはずっとありました。それは、どの時代でもそうです。元号を決めることは、将軍がやろうと思えばできたんですが、そういうことはあえてしなかったんですね。
●第4問。今までの元号は全部で約いくつあるでしょうか。(資料3を提示)
●今までの元号は全部でいくつでしょうか。
1、一〇〇個
2、一五〇個
3、二〇〇個
4、二五〇個
●(元号一覧表を配付)正解は4番の約二五〇個です。(歓声)正確には二四七個、今までにつかわれました。明治の前は江戸時代と覚えていて間違いじゃないんですが、江戸時代にも元号はたくさんあります。記念すべき一番初めの元号は何ですか。
○大化
●大化の改新って勉強したでしょう。ちょうどそのときです。
B元号に込められた願いについて
◎元号は、ただなんとなく決められているのではなくて、大化にも理由があります。「大々的に国を変化させていこう」という意味です。その「大」と「化」をとって大化と名付けています。元号には願いが込められています。
●では、今の元号「平成」にはどんな願いが込められていると思います。漢字から意味を予想して書いてみましょう。漢字辞典を使ってもいいです。
○戦争のない平和な国
○平和が成立する。
○平和になる。など
◎だいたい正解です。漢字のイメージからすると平和のイメージになると思います。これは中国の昔の本からとっています。(板書)読んでみましょう。
○地平らかに天なる
◎国の内外、天地に平和が達成されるという意味です。元号には、このように願いが込められているので、例えば「死」とか「苦」といった漢字は使われません。そんな縁起の悪い時代にしたくないもんね。同じように、なにか願いを込めてつけられているものって他にないですか。
○名前。
◎そうだね。みんなの名前もお家の人がいろいろな願いを込めてつけたと思います。なので、名前で使われる漢字と元号で使われる漢字は重なっているのがあります。たとえ仁君。(学級の児童)「仁」は元号でも一三回使われています。
(資料4を提示)
資料4「仁」が使われている元号
永仁 応仁 寛仁 建仁 元仁 弘仁 天仁 仁安 仁治 仁寿 仁和 仁平 暦仁
●みなさんも、偉い人になったつもり平成の次の元号を作ってみて下さい。条件は漢字二文字です。自分の名前を使ってもいいです。好きな漢字を使ってもいいです。正解はこれから何年後かわからないけど、平成から変わったときにあたる人がいるかもしれない。元号と理由をノートに書きましょう。その次に、このカードに元号とふりがなを書いて黒板には張って下さい。
○自分が考えた元号を発表。
Cまとめ
◎最後のまとめなんですが。今は平成一八年と西暦二〇〇六年の二つの時代の数え方をしていますが、ある人は、二つの使い方を本に例えています。西暦を本に例えるとページになります。それはそれで便利です。日本の元号を例えると目次になる。このページのあたりにはだいたいこんなことが書いてある。先生もその通りだと思います。
先生のおじいさんからね、明治時代の人は今風に言うと根性があって勇気があって潔かった、ごまかしたりしない、せこいことをしないと聞いてきました。さて、あと五〇年一〇〇年たったときに、平成の時代を生きた人はなんて言われるだろうな。
平成の時代を生きた人たちはすばらしい人たちだったと言われるように、今の平成という時代をよくしていければなあと思います。
(3)板書
平成 昭和 大正 明治 平成→「地平らかに天成る」
課題 元号って何だろう。 「国の内外、天地に平和が達成される」
一、一三六一年前(世界で日本だけみんなで考えた元号、長い伝統を受け継いでいる)
二、明治から天皇陛下が崩御なされた時
三、天皇(平成は内閣が決めている。)
四、二四七個
まとめ
平成を生きる私達が、後世のひとからすばらしい時代であったと思われるように生きていきましょう。
(4)考察
・驚きが感じられるクイズでよかった。
・元号に使われる漢字と名前で使われる漢字が似ていることに気づかせることにより、その後の元号つくりの作業を意欲的に行うことが出来た。
・元号に愛着を持たせるために、自分で元号を考える作業は有効であった。
・時間に余裕があれば、作った元号の理由を発表させ話し合わせる活動も可能だと思われる。
・「平成」は、内閣が決めたことを、授業後に補足の説明として行った。
4、児童の感想(自由記述)
(1)全体的に多かった感想
・「元号」という言葉そのものを初めて知った。
・元号が、千年以上前からあること、二四七個もあること、それぞれに願いが込められていること、天皇陛下が亡くなられたら変わることを初めて知って驚いた。
・元号つくりが楽しかった。
・平成の次の元号に興味を持った。
・自分達が作った元号が将来本当になってほしいこと。
・元号のクイズがおもしろかった。
(2)個別の感想(抜粋)
・平成や昭和などの元号にちゃんと意味があることを初めて知りました。昔から元号はあって、いい年になるようにと願いが込められているんだなあと思いました。元号は二四七個もあって、どれも天皇が決めていたんだなあと思ったし、昔も今も権力者が元号を決めるんじゃなくて、やっぱり天皇が一番偉いんだなあと思いました。
・今日、私が決めた「明安」という元号は、平成の次の元号になってほしいです。少なくともみんなの中から一人でも元号になってほしいです。
・初めて元号の意味を知りました。元号にはそれぞれ色々な意味があってどの時代もよい意味があるんだなと思いました。私達の時代は多分平成で終わりだと思うけど、後の人たちにつながるようなよい時代になればいいと思います。
・自分達で元号を作るのはおもしろかったです。私がつくったのは、「幸仁」という時代です。次の時代の名前はまだ分からないけど、もし、私と同じになったら、この名前の通りになるといいなあと思いました。
・平成というこの時代の意味もよく考えて作ってあるんだなあと思いました。元号を作って、みんな、だいたい「平和」って感じの元号を作っていたので、やっぱり平和っていいなあとあらためて感じました。
・平成という元号にはいい意味が込められているんだなと思いました。
・元号は世界で日本だけで、日本はすごいんだなあと思いました。
・一時間だけだったけど結構楽しめたし、元号のことがよく分かった。機会があれば、また、元号のことを勉強したい。
・元号のことをもっと知りたいと思った。
・次の元号はなんなのか未来に行ってみたいです。もし、自分が考えた「悠心」が本当に当たっていたらすごいなあと思いました。
・元号を決めてきたのは権力者だと思って勘違いしていたから、今しっかり覚えれてよかった。
・天皇が亡くなり、新しい元号になって、平成がなくなったら寂しい気がする。
・親は多分知らないと思います。クイズ(質問)も楽しかったです。間違ってばかりだったし、あてずっぽだったけど、ちょっぴり頭の脳みそにしわが三本くらい増えて、頭がよくなったような気がしました。
・さっそく、家に帰ったら家の人に教えたいです。
・自分が作った元号が、いつか本当の元号になればいいなと思った。
元号を作るときいい字が見つからなくて困ったけど、最後はとってもいい元号ができてよかったです。
・元号はこれから先、どこまで増えるのかなと思いました。
(3)児童が考えた元号
怒伝 (どでん):努力が伝説になるくらいがんばってほしい。努力は伝説になる。
翔天 (しょうてん):みんなが大空に飛び立つように。
秀安 (しゅうあん):秀れている人たちが誕生し、穏やかで安らかな時代になるように。
平心 (へいしん):平和な良い心を持てるようになりたいから。
流星 (りゅうせい):国民一人一人の願いが叶うように。星のようにきらきらと輝いていくように。
平長 (ひらちょう):平和が長く続くように。
平歴 (ひられき):平和な歴史が続くように。
平美 (へいび):美しい平和。
大心 (たいしん):人はみんな大きな心がある。
正成 (しょうせい):国が正しく成り立っていくように。
平律 (へいりつ):平和で法律などを守る世の中。
愛世 (あいせ):愛があふれている世界になってほしいから。
天恵 (てんけい):天から人々に恵が来る。
恵志 (けいし):かしこい人をめざすという意味。
永平 (えいへい):永遠におだやか(平和)な国であるように。
笑話 (しょうわ):みんなと笑いながら話ができるように。
幸仁 (こうにん):誰もが幸せで、思いやりのある心をもって、豊かな暮らしができるように。
幸生 (こうせい):幸せに生活できる。
明安 (めいあん):明るく安心できる時代になるように。
5、参考資料
・「愛国心の教科書」 渡辺毅著 PHP研究所
・歴代天皇年号辞典 米田雄介著 吉川弘文館
・[図説]皇室のすべて 学研
・日本の一〇〇人 NO1(織田信長) デアゴスティーニ
・平成最初の日(インターネット検索)
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