|
大化の改新

2003.03/産経新聞東京朝刊掲載

齋藤武夫(自由主義史観研究会副代表・さいたま市立島小教諭)
|
文部科学省『小学校学習指導要領』「社会六年」には、ご存じの方は少ないだろうが、確かに次のように書かれている。「(歴史との関連も図りながら)天皇についての理解と敬愛の念を深めるようにすること」。
これは、国民の常識を培う重要な教育内容に関する指示である。私もまた国の指示に従って、「天皇についての理解と敬愛の念を深めるよう」に努めている。ここに示す大化改新の授業はその一例である。
まず始めに聖徳太子一族の滅亡と蘇我氏の隆盛を物語った後、次のような選択肢で国づくりの大方針を問う授業である。
(A)日本は独立したばかりなのだから、真に実力のある人が国をまとめたほうがいい。いま国を動かす実力があるのは蘇我氏なのだから、蘇我氏中心の国にしたほうがわが国はより発展できるだろう。
(B)十七条憲法を受けついで、天皇中心の国を守る方がいい。いま蘇我氏中心の国にしてしまったら、力があれば誰でも国の中心になれることになり、次は誰またその次は誰と、次々と争いが起きる国になるだろう。
聖徳太子死後の日本はどう歩むべきか。中華冊封体制から自立したばかりの、わが国の進路を問うのである。今年の子供たちは全員が(B)を選び、(A)を選んだものはいなかった。子供たちは言う。
「蘇我氏が中心の国になると、また蘇我氏に反対する人が出てきて、また日本がバラバラになる。十七条憲法のままがいい」「国を一つにまとめる中心になる人は、ただ力が強いだけじゃだめと思う」「いま蘇我氏が強くても、いつかはまたより強い人が出てきて蘇我氏が倒される。国内で争いが続き日本は発展できない」「せっかく天皇中心にまとまったのだから、蘇我氏は天皇に協力すべきだ」 子供なりに天皇制度を選択する意義をとらえた発言が続いた。私は次のように解説した。
(A)実力者は、武力で前の皇帝を滅ぼして自分が新しい皇帝になる。皇帝の独裁政治で国づくりを進める。〈中国方式〉
(B)国のまとまりの中心は、天皇家である。実力者は、天皇家を滅ぼして自ら国の中心になることはせず天皇を助けて国づくりを進める。〈日本方式〉
「私たちのご先祖は中国に学んで国づくりを進めましたが、国のまとまりの中心は天皇であるという古くからの伝統は守り続けました。その理由は皆さんが考えてくれた通りです。中大兄皇子は、この国づくりの大方針を打ち立てた人です」
授業はこの後、中大兄皇子と中臣鎌足との蹴鞠の出会いから大化改新に進む。天皇中心の統一国家がますます具体化していく物語である。
授業後、子供の一人は「大化から平成までずっと元号がつながっていることに感動しました」と書いた。ところで前述の学習指導要領だが、実は引用した部分ほど全国の小中学校で無視されている言葉はない。
実際には、天皇制度の歴史はほとんど教えらていない。天皇への敬愛の念などまったく育てられていないのである。しかも教育委員会や国には、それを指導する意志すら見られない。おそらく「そこだけは墨を塗っておけ」という占領軍命令が出ているに相違ない。
授業づくり最前線の目次へ
|