羅府スケッチ(6)

赤野達哉(自由主義史観研究会理事・西大和学園CA校、同補習校

反日デモと一八回目の謝罪

中国での反日デモに関して、アメリカのメディアは、予想以上に冷静だった。基本的には中国に非があるという論調で、"The Washington Post"など主要紙は一貫していた。そんな中で、"The New York Times"や"The Los Angeles Times"には、「しかし、日本もちゃんと謝るべきだ」、というような記事もあった。だが、誤解してはいけない。両紙は民主党支持を表明しており、それは読者も知っている。『朝日新聞』が不偏不党を謳いながら、戦前・戦後と、偏向報道を率先して行ってきたマヤカシとは全く異なるのだ。

四月二一日付英国誌"The Economist"によれば、日本による公式謝罪は一七回を数えるという。中国は更なる謝罪を要求しているが、時を同じくして、韓国の盧武鉉大統領が、日韓基本条約を無視し、日本政府をユスっている。アメリカでは交通事故の際に、"I’m sorry."と言った瞬間に賠償責任が発生するとさえ言われている。今回のことで、無意味に謝罪すれば、財布を開かねばならないということが、日本でも常識になるべきだ。

しかし四月二二日、小泉純一郎首相はアジア・アフリカ首脳会議という大舞台で、一八回目の謝罪をした。但しこれは、日本政府の「大人の対応」だと一応評価しておこう。因みに"The wall street journal"は、四月二五日付社説で、この謝罪を、「心からのもの」と評している。そして一連の問題について、「北京が謝罪する番だ」と明白に断じ、調子に乗りすぎた中国政府を諌めているのだ。


報道してはいけない「自慰」行為


ところで四月二四日に、ロサンゼルスのダウンタウンで、支那人と韓国人による、千人規模の反日デモがあったらしい。「らしい」というのは、ローカルテレビニュースでは、JR西日本の脱線事故は大きく報道していたが、反日デモについての報道はなかったからだ。小生はそれを、日本からの報道で知ったのだ。

五月に入って、勤務校の校長と歓談する機会があり、その話題を出したら、校長も「初耳だ」と言って、目を丸くしていた。そう、在留邦人も、その場に出くわさない限り、わからないようなデモが、日本では報道されていたのだ。

アメリカ、特にカリフォルニア州では、デモなどの示威行動は、日常茶飯事である。一々報道などしない。もしも、本気ならば、ダウンタウンよりも、日本人が多く住み、日系企業や商店が多いサウスベイ地区でする筈だ。要するにこのデモは、時局便乗型の「露出狂による自慰行為」のようなものだ。ニュース番組での報道はちょっと無理だろう。

因みに小生、コリア・タウンに住んでいるが、全く平穏であった。我が家では領事館に、緊急時のメール配信登録をしている。今当地で問題になっている、高速道路での発砲事件や、外国人相手の詐欺については、細かく注意喚起を受けているが、反日デモの連絡はなかった。

支那人や韓国人による反日イベントを、どんなものでも一部マスコミが嬉々として報ずるのは、自虐趣味を国民に押し付けているのと同じだ。異常趣味がニュースに馴染まないのは、どこでも同じだと思うが、日本ではNHKでさえ、その常識がない。嘆かわしい話だ。


何の遠慮がいるものか


その異常趣味の原因は、中国・韓国への、滑稽なまでに度が過ぎた遠慮だ。

小生が初めてアメリカに来たとき、羽田発の中華航空便を利用した。既に成田空港は開港していたのに、中華航空は羽田からしか飛んでいなかった。継子扱いは、同社が台湾のフラッグ・キャリアだったからだろう。晴天白日旗を掲げる飛行機が、五星紅旗のそれが、新空港を一緒に使うのはマズいと、誰かが考えたのだ。当時、まだ半官半民だった日本航空が、台北、高雄便だけを、子会社の日本アジア航空に運航させていたのも、同じような理由からではないか。これを配慮と言うなら、余りにも浅はかである。今も昔も香港で、「二つの中国」の飛行機が、毎日何便も離発着しているではないか。

ご存知のようにアメリカは、中華民国と断交し、二つの中国を否定したとはいえ、「台湾関係法」を制定し、安全保障に大きく関わって、中国の侵略行為を抑止している。それでいて、中国政府は、煙たがりつつも、何もすることはできない。何でもアメリカに追随する必要はないが、もう少し見習っても良いのではないか。


その気になれば味方にできる米国世論


一般的なアメリカ人は、事実や正義を重視する。卑怯者が一番嫌いだ。だからこそ、外務省の失態で、真珠湾攻撃が「奇襲」になったことが奇禍となり、FDRは、戦争を嫌がっていた国民の怒りを結集できたのだ。

アメリカでは、中国のみならず、韓国の教科書が国定だということも知られている。日本で自由に(本当は、そこが問題なのだが)採択される教科書との違いは認識されている。だからこそ、冷静な報道がなされたのだ、と思う。

五月八日の中韓首脳会議で、連中は、日本に「正しい歴史認識」を求めたが、こういうチャンスを捉えて、官房長官がメディアに登場し、「歴史的事実を、国家が決めた歴史認識で歪める様なアンフェアを、自由を愛するわが国は許さない。」と述べ、アメリカ世論の支持を得るべきだったのだ。ところがそんな時、与党の幹事長が雁首揃えて韓国へ参上し、観光名所「秘宝館」じゃなかった、反日名所「独立記念館」を神妙に拝見しているようでは、お先真っ暗である。

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