羅府スケッチ(4)

赤野達哉(自由主義史観研究会理事・西大和学園CA校、同補習校)
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「アメリカ人は不注意だ」
補習校四年生「社会」、昨年四月の最初の授業。アメリカと比べた、日本の良いところを、自由に発言させた。元気よく手が挙がる。
「食べ物がおいしい。」
「外でいっぱい遊べる。」
「治安がいい。」
これまで、こましゃくれた高校生を相手にしてきた小生は、清々しい気持ちで聞いていた。と、その時、一人がこう言った。
「アメリカ人って、不注意だと思う」。
これは発問への直接のレスではなかったのだが、小生は、一瞬言葉を失った。 生徒は深く意識して言った訳ではないと思うが、小生は、「不注意」ほど、一般的なアメリカ人のことを端的に表した言葉はないと思った。
運転上の不注意
本当に、アメリカ人は不注意なのである。 特に、車の運転は酷い。多くのアメリカ人には、車間距離という概念はない。高速道路でも、適切な車間距離をとっている車は、少数派だ。こちらが日本流で、きっちり車間距離をとると、平気で横から入ってくる。これでは、とらないほうが安全なくらいだ。
車線変更に方向指示器を使わない車、駐停車禁止の箇所で停まっているにも関わらず、ハザードを出していない車も非常に多い。普段は、ボランティアや寄付などを積極的に行い、他人のことを思いやるアメリカ人が、こと車の運転になると、自己中心的になるのが不思議である。
しかも、ロサンゼルスは道路が悪い。昨年末からの長雨で陥没したところも多く、高速でさえ凹凸があり、運転には注意を要する。雨の日、日本なら、教科書通りにスピードを落とす車が多くなるが、こちらは、余程の大雨でない限り、普段と全く同じ速度で飛ばす。今年は異常気象で雨が多いが、通常ロサンゼルスでは、雨季以外は殆ど雨が降らない。ドライバーは、雨に不慣れなくせに、水しぶきを上げて疾走する。
また、高速道路では、バーストしたタイヤの破片をよく見る。道が悪いことを忘れて、こまめにタイヤの空気圧を調べるなどのメンテナンスを行っていない、不注意なドライバーが多い証拠である。
こういう運転上の不注意を見ていると、自動車教習所という日本のシステムは、とても優れているように思える。費用は高すぎるが。
消費生活の不注意
アメリカが借金大国であることは周知の事実であるが、一般国民も、借金漬けである。ローンやクレジットで大量に物が買われ、それで景気を支えている。
耐久消費財等のテレビCMで驚くのは、「二年間無金利」とか、「二年間支払不要」とかいったものが多いことである。兎に角借金しやすいのだ。二年も支払いをしなかったら、小生は買ったことすら忘れるだろう。他人事乍ら心配してしまうが、そうやって、家財道具を揃えている人は、結構多いという。
しかし、支払いの滞りなどがあれば、第三者機関によってしっかりと記録される。この記録(クレジット・ヒストリー)は、肝心の住宅ローンを組む時などに、参考資料として必ず提出され、記録が悪いと、金利を高く設定されたり、ローンが組めなかったりするのだ。
女性の不注意
Gender(「性差別解消」と言う名の「人間文化の破壊」)、Affirmative Action(「積極的差別是正」と言う名の「逆差別」)、Politically
Correct(「政治的に正しい言葉遣い」と言う名の「言葉狩り」)など、民主主義の行き過ぎを憂えた人々の間では、十五年も前に、"Is
this what we call democracy?"と警鐘がならされていた。しかし、不注意なアメリカ人は、それを野放しにした。
例えば、アメリカのGender論は、日本流の、性差の完全解消というような、グロテスクなものではないが、それが真の女性解放になると信じられていた。ところが現在、女性の地位はどうなっただろう。
二月九日、パソコン大手のヒューレット・パッカード社の女性CEO(最高経営責任者)、 Carly Fiorinaが事実上解任されたと、大きく報じられた。勿論、同社が大会社だということもあるが、所謂大企業では、女性取締役の数こそ増えているが、CEOが女性だという例は、まだまだ少ないから、ニュース・バリューが大きくなったのではないか。
前述の、不注意な借金生活を支えているのは、フルタイムで働き、家計を夫と共に支えている妻である。Gender論は、女性を職場で認知させ、発言力をある程度高めたかもしれないが、昔からアメリカの男性は家事を手伝っていたし、子育てにも関わってきた。要するに、女性も外で平等に仕事をし、物質的に豊かになったということだけが、不注意な女性解放論の果実なのではないだろうか。
しかも、女性が男性と「完全に」に対等になったせいで、こういうことも起こっている。
自営業のアメリカ人女性Aさん。彼女は節税の為、日本人の夫Bを形式的な共同経営者としていた。当時Bは、ヒモ同然の失業者だった。ある日、AさんはBに三行半を書いた。カリフォルニア法では、離婚に理由は不要である。これも女性の権利といったところだろう。さらに当地では、結婚後に作った全財産の半分を、無条件で受け取る権利があるが、彼女は何も請求しなかった。ところが、元自衛官(!)だというこのBは、会社の運転資金を全額引き下ろし、家財道具を売り払い、離婚手続きを放置して、さっさと帰国してしまった。当然Aさんは訴えようとしたが、弁護士に止められた。何故なら、離婚が成立するまでは、財産は全て二人のものであり、このような案件は、「夫婦間の問題」で片付けられるとのことだった。警察に相談しても、「離婚してから来なさい」と言われたそうだ。
これはAさんの非ではない。男女平等論者の不注意が、歪な男女平等社会を構築してしまったことに責任があるのだ。己んぬる哉。
因みに日本男児の風上にも置けないB。東京地裁でAさんに訴えられ、最終的には和解を求めてきたという。日本の歪んだGender論者には前近代的と見える日本の法や制度が、進歩的なアメリカよりも女性を守っていることになる訳だ。
歴史への不注意〜日米の違い
アメリカは、若い国だからなのか、歴史問題に関して、頗る不注意である。人権を守るためにこの国が生まれたからだろうか、特に人権概念に甘い。だから支那人や、日本軍に何らかの恨みを持つ元兵士たちが、人権めいたことを口にすると、殆ど検証もしないで、本当だと思い込む。プロパガンダや感情と歴史の区別もつかないとは、全く不注意である。
昨年一二月二三日に、アメリカ三大ネットワークのABCで全国放送されている人気クイズ番組"Jeopardy!"(ジェオパディ)で、「日本軍が三十万人を殺害したとされる支那の都市はどこか?」という、悪質なプロパガンダに基づく出題がなされた。この番組を制作しているのは、何とSONY
Picturesなのである。驚いた小生は、友人・知人にも連絡して、とりあえず日本の同社に抗議した。その後暫くして日米双方の責任者から、一応の謝罪と、再放送をしない旨の言質を得た。しかし、この番組がこういうケースで必ず行っている、訂正放送をする約束をしていないので、抗議はまだ続けているが、どうやら先方は解決したと決め付け、小生の抗議を無視しているようだ。
この出題に対して、回答者が即座に"Nanking"と答えたことでもわかるように、このプロパガンダは、不注意なアメリカ人の間で、史実として広がってしまっているのだ。
ただ、アメリカ人は不注意ではあるが、その一方で合理的精神の持ち主でもある。大多数の善良なアメリカ人は、批判が合理的であれば、そちらを正とすることを厭わない。
アメリカで一番人気のある大統領は、JFKではなくFDRなのだが、リビジョニストは、FDRが不注意を装って、真珠湾攻撃を知っていたと信じ、激しく批判の矢を放っている(尤もこれは、専門家である小生の学部時代の恩師・須藤眞志先生によると、未だ証明されていない、とのことである)。ただ、日本が絡む歴史認識には、合理的精神を発揮させないように、中共などの息がかかった連中が暗躍し、是正を拒ませ、不注意が継続する構造を作っている。
誤解を恐れずに言えば、本会は真のリビジョニストである。数々の不注意に歪められた国史を、あるべき姿にもどさねばならない。国史への不注意は、国を誤らせてしまう可能性があるからだ。
歴史に関しては、日本人もかなり不注意だ。しかし日本人の中の、歴史に不注意な輩は、合理的精神も良心も持ち合わせていない、言わば「意図的な不注意者」である。そういう点では、アメリカ人の能天気な不注意の方が、余程安全である。
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