「武士」・「硫黄島」・「南京事件」
の授業づくりの提唱

2007年の年頭にあたって

藤岡信勝(自由主義史観研究会代表・拓殖大学教授)
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新しい年を迎えて
会員の皆様、読者の皆様
あけましておめでとうございます。よいお年をお迎えになられたことと存じます。
しばらくお休みしていましたが、今月号から毎号、「歴史と教育」の巻頭にスペースをいただいて、私たちの研究会が今取り組んでいる課題や、歴史教育・歴史教科書改善運動の展望、それに私自身が考えていることなどを書かせていただくことにしました。
自由主義史観研究会は、数ある保守系の諸団体のなかで、この会でしか取り組むことの出来ないテーマをもっています。それは「歴史の授業をつくる」ということです。
だからといって私たちの会は単なる教育研究団体でもありません。それは二つの面から言えると思います。第一に、私たちの会は発足後間もなく、中学校の全ての歴史教科書に掲載された「従軍慰安婦強制連行説」という嘘の記述に反対する意思を表明し、その結果として「新しい歴史教科書をつくる会」というもう一つの団体を生み出しました。一教育研究団体の枠を超えた社会的影響力と実績を持っています。もう一つは、会員の構成の半数が教育とは直接関係のない会社員や主婦などからなっていることです。こういう会員構成をもった教育研究団体は他にはないでしょう。そのことが私たちの会の大きな特徴であり、利点になっています。
さて、私たちの会のこうした特徴を原点として確認した上で、当面する三つの研究テーマについて以下、述べることにします。それらのテーマの内容と研究方法に、私たちの会の右に述べた特質が如実に表れていることをご確認いただけるかと存じます。
「武士」をどう教えるか
第一のテーマは、「『武士』をどう教えるか」です。このテーマは、昨年七月の全国大会後の理事会で、向こう数年間にわたる長期的な研究課題として決定したものです。
日本の歴史を教える上で、まず最初に考えなければならないことは、他の国には見られない日本の「国柄」の特徴は何かということです。その答として、私たちは「天皇」の存在をあげました。これは初めから決まっていたのではなく、歴史の授業づくりの試行錯誤の中で次第に収斂してきた結論でした。
その最初のまとまった研究成果は、齋藤武夫さんの『学校でまなびたい歴史』(03年、扶桑社)で提出された、聖徳太子を日本の国柄の設計者として大きく位置づける教育課程プランです。同じ視点は『改訂版・新しい歴史教科書』でも貫かれています。
次のオーダーとして私たちが着目したのが「武士」です。武士もまた天皇とともに、地球上の他の地域では出現することのなかった日本固有の存在です。武士についての知識がなければ幕末までの歴史がよく分からないのは当然ですが、実は近代日本の成功ということも、武士の規範であった武士道精神が国民の間に多かれ少なかれ共有されたことと無関係ではありません。その意味では、武士と武士道についての理解が日本の歴史の大部分を覆うテーマになりうることが分かります。
昨年の十一月四日、第十九回授業づくりセミナーが神戸で開催されましたが、「『武士』を教える授業づくり」をテーマとする最初の研究会となりました。本号で紹介した森一郎さんの授業は、戦国大名の家訓をもとにして戦国武士の理想像に気付かせる画期的な内容でした。そのユニークな設問も極めて効果的で、本号で核心部分だけを紹介していますが、希望者には資料のコピーをおわけします。吉永潤さんは武士の起源から「忠義」の観念にいたる論理の展開を一つのストーリーとして提案しました。こちらの方は次号で紹介します。こういう具体的な教材に接してみると、教師以外の一般会員にも果たすべき役割があることが感じられるのではないかと思います。
実際、研究会のコメントでも、一般会員から貴重な指摘が多数なされています。そこで、会では、「武士・武士道」に関する授業のアイディアを募集することにしました。武士や武士道にも多様な側面があり、著者によっても描き方が異なるでしょう。どんな断片的な思いつきでも結構です。ご投稿をお待ちしています。
「硫黄島」と栗林忠道
第二のテーマは「硫黄島」です。
クリント・イーストウッド監督の硫黄島戦に関する映画の二部作が話題を呼んでいます。アメリカの視点から描いた「父親たちの星条旗」と、日本側の視点から描いた「硫黄島からの手紙」です。会では日本国内の上映が開始された直後の十二月中旬に、二つの映画の批評会を5人ほどのメンバーで行いました。その内容の一部は、英訳して新規に立ち上げた会の英語版ブログに掲載しました。映画の評価、特に日本バージョンに対する感想は様々でしたが、米国製戦争映画の中で敵側の日本人が普通の血の通った人間としてまともに描かれたのはハリウッド映画史上初めてであるということについては、意見が一致しました。硫黄島作戦の中心人物が栗林忠道中将です。戦後の教育では軍人をまともに扱うことは長い間タブーでしたが、立派な軍人を授業で取り上げることは大変重要な課題であり、武士道にも通じることです。
そこで、服部剛、安達弘両会員に授業づくりを依頼し、三月二日に一般公開することになりました。
「南京事件」めぐる情報戦
第三のテーマは「南京事件」です。
また映画の話になりますが、今年は「南京事件」七○周年の年にあたり、アメリカと中国で、対日非難のプロパガンダ映画が四本も公開されることが分かっています。反撃しなければ嘘の宣伝が世界的に定着しかねません。今、反論の映画を日本側で制作する計画がチャンネル桜の水島さんを中心に進んでおります。会としても最大限の協力をしていきたいと思います。同時に、かつて佐藤仁さんや広田好信さんが試みられた、「南京事件」を授業として取り上げて教える教材づくりにも取り組みたいと思います。
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