映画『南京』とアメリカでの反日の動向

内藤喬生(自由主義史観研究会北米支部会員)

「50年代は人と人が助け合い、60年代は人が人を粛清し、70年代は人と人がだましあい、80年代は人といえば自分だけ、90年代は人に会えばぼったくる」(何清漣『中国現代化の落とし穴』草思社)。では21世紀の中国はどうだろうか。もはや国内の矛盾は爆発寸前に達し、そのガス抜きの唯一の手立てが歴史歪曲、捏造による日本攻撃となっている。国民を内なる鬱憤から逸らす絶好の材料が「南京事件」だ。

ご承知の通り、マイク・ホンダに代表される反日キャンペーンは世界を舞台にして展開されており、南京の映画は世界で十本以上作られようとしている。このキャンペーンは実に有効に作動し、もはや「南京事件」は世界の常識になろうとしている。  

8年前、日本のある劇団によって、満州の日本兵、シベリア抑留に関する芝居がロサンゼルスで公演された。私は満州に関心があり、満蒙青少年義勇兵の生き残りの方と一緒に、満州へ取材旅行をしたこともあるので、この芝居にも興味を持ち、2回も観に行った。俳優の演技力もストーリーも素晴らしかったのだが、ただ気になったのが、満州や抑留とは関係のないはずの「南京事件」を、あたかもあったかのごとく、登場人物に語らせていたことであった。

そしてロスでの千秋楽(2度目の観劇)、私はこの劇団の正体を見ることになった。演技が終わり、出演者が舞台挨拶をするところで劇団の団長らしき男が、「南京大虐殺といい、日本軍は中国の方々に色々と申し訳ないことをしました」と挨拶し、何と団員と共に土下座をしたではないか。いったいどうなっているのかと、最前列に座っていた私はふと後方の座席を振り返った。そこでは多くの中国人の観客が立って、歓声を挙げていた。そういえばこの芝居の協賛者に、中国系の団体の名前があった。さらに切符の販売に貢献していたのが、ロスでは著名な日系左翼のボスであったことも後に分かった。劇団は彼らの力で全米を回り、日本軍が中国や満州で悪いことをしたと宣伝していたのである。実は私は、この左翼の子分と、つい最近まで懇意にしていた。その男は「俺は中国における反日運動を扇動したし、日本の国連安保理常任理事国入り反対署名運動をも支援した。また中国系、韓国系の人々が反日デモをするように働きかけたのだ」と、公然と日系社会で触れ回っていた。ボスが何かの指示を与えたのか、それとも法螺なのか、実態はつかめない。ただ、彼とボスが中国の抗日団体と繋がりがあるのは間違いない。  

一連の反日南京映画は、この芝居と同じく、歴史偽造キャンペーンの一環をなしていることは間違いないだろう。先日、その中でも最も有名な作品、“Nanking”を I 氏とともに観に行った。I 氏とは昨年の12月6日に九段会館で行われた『参戦勇士の語る「南京事件」の真実』集会にもロスから一緒に参加した仲だ。この映画は日本では一般上映されないであろうから、アメリカ在住の憂国の士として、内容を報告する義務があると考え、以下、簡潔にお知らせする。  

まず、面白くない。映画を観る目が肥えているアメリカ人は殆ど興味を示さないだろう。実際、当日は日曜日だというのに、観客は私たちを含めて20人もいなかったのだ。  

ストーリーは、「南京大虐殺」をでっち上げたマギー、フィッチ、ラーベが証言するというかたちで展開するが、概ね東京裁判での記録をそのまま踏襲する内容だ。時折日本軍がいかに野蛮であったか、を想像させるような記録映画を挿入し、ストーリーを補強していた。記録映画の多用は、ローバッジェットであったことが想像されるが、出来上がりも、映画というよりもテレビのドキュメンタリー番組のような軽い感じがした。  

当時幼かったはずの中国人の証人は、鮮明な記憶力を元に、日本軍の悪行を訴え、事件が事実であったとの印象を植え付けようとする。マギーらに扮する役者も、迫真の演技で観客の涙を誘おうと必死だ。日本人の証人も数人登場した。個人的な印象だが、人相の悪い人が多かった。彼らは自宅と思しきところで「インタビュー」を受けていたが、暮らしぶりは良くなさそうだ。

奇妙なことに、日本人の証人は、レイプがあったとは証言したのだが、「大虐殺」があったとは一言も述べなかった。「……というような状況では、どうなるかわかるでしょう」というような、観客の想像力を掻き立てるように意識した言い方をしていた。  

私は、これがこの映画のトリックだと思うのだ。実際この映画全体を通じても、「30万人の大虐殺があった」という中国の主張には触れられていない。証人に好きなようにしゃべらせ、鑑賞する人間の思考を誘導させる手口は、声高に「あった」と言うよりも、効果的だということなのだろう。

余談であるが、アイリス・チャンに似た中国人女性も出演させていた。これもまた、「南京事件」を「史実」にすることに多大な貢献した彼女と、その著作であるあの偽書を観客に再認識させるためだろう。  

この映画を製作したのは、ThinkFilm HBOというテレビ局で、事情通のI氏によると、ユダヤ系の会社らしい。私たちが観に行ったサンタモニカ市にある Royal もユダヤ系の映画館であることがわかった。そう言えば、先頃亡くなった、トム・ラントス元下院外交委員長もユダヤ人だった。マイク・ホンダの尻馬に乗って、慰安婦問題で日本を非難していたラントスだが、ホロコーストと南京事件を結び付けたがるユダヤ人が多くいるということなのだろうか。  

予備知識のない人がこの映画を観ると、やはり日本軍は南京で一般庶民を大量に殺していたという結論に達するだろう。前述通り、この映画の「証言」には思考誘導のトリックがある。また「生き証人」と俳優が演じる証人を対等に並べ、俳優の演技と不確かな証言を相互に補強させあっている。実写挿入もそうだ。日本軍の上海爆撃を大きくクローズアップさせ(そもそも上海は国民党軍も自ら空爆している)、南京でも同じようなことがあったに違いないと想像させるのだ。  

結局のところ、あの劇団が満州とシベリアの物語には全く関係のない「南京」を無理やり挿入したように、大前提は「日本軍が南京で大虐殺を行った」ということ、そしてそれに沿った「証人」を集めてしゃべらせるということ。結局 “Nanking”の手法も、今までにあったやり方と基本的には変わらない。  

しかし反日劇団といい、この映画といい、アメリカでの反日は、中国人団体とそれを支援する反日日系人が手を携えてシステマチックに展開されている事実は抑えておく必要がある。反日との戦いの主戦場は、実はアメリカなのかも知れない。

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