集団自決冤罪訴訟の不当判決は何ゆえか?

南木隆治(沖縄集団自決冤罪訴訟を支援する会会長 )

◆不可解なり、「全面敗訴」?  

平成12
年3月28日、大阪地裁の判決は、「沖縄ノートでは原告梅澤及び赤松大尉の氏名を明示していないが、引用された文献、新聞報道等でその同定は可能である」と同定性を認める判決で、当方の訴えが採用され、被告の訴えは退けられました。  

同時に「自決命令の伝達経路等が判然としないため、本件各書籍に記載されたとおりの自決命令それ自体まで認定することには躊躇を禁じ得ない」と裁判官の認識を示してもいます。  

そうであれば当方が全面敗訴するとは普通考えられないのですが、結果は「原告らの請求はいずれも棄却する」という大変不当な判決でありました。


◆被告大江の外堀を埋めた判決   

しかし、重要なことは、判決では、被告大江健三郎氏が法廷で弄したまやかしについては、ことごとく否定していることです。  

大江氏は、『沖縄ノート』は、赤松・梅澤両隊長を特定したものでもなく、名誉毀損表現もないと強弁しましたが、判決は『沖縄ノート』の表現が、「集団自決という平時ではあり得ない残虐な行為を命じたものとして、原告梅澤及び赤松大尉の客観的な社会的評価を低下させるものと認められる」とし、大江氏が、法廷で述べた曽野綾子誤読説についても、『沖縄ノート』が必ずしも文法的な厳密さを一貫させた作品であるとは解されないとしています。そして「一般読者が普通の注意と読み方で沖縄ノートの各記述に当たった場合、『あまりに巨きい罪の巨塊』との表現は……渡嘉敷島の守備隊長の犯した罪か、守備隊長自身を指しているとの印象を抱く者も存するものと思われる」として一蹴したのです。  

控訴審では、原審で弄し続けた大江氏の匿名論、曽野誤読論、タテの構造論といった文学風まやかしは、すでに外堀を埋められてもはや通用せず、大江氏の良心を気どった偽善の仮面がついにはぎ取られる事になります。  

控訴審では必ず逆転すべく、すでに様々な作戦を立てているところですが、必ず勝訴できると確信できます。一審で勝訴して、二審で逆転されては無意味です。  

今回、右のように外堀を埋める判断を得られたことは、大きく歩を進めたといえます。その一方で、結果的には不可解な「全面敗訴」とされた矛盾は、全国の同志の皆さまの心に火をつけて、むしろ良かったかもしれないと思うのです。


◆司法は信用できるのか?  

また、判決がリークされていた疑いも、状況判断から浮かび上がっています。  

判決以前に、当方弁護士にマスコミがしきりと「相当性」についてどう思うか聞いてきていました。  

当方弁護士は不可解な質問と思い、「自決命令があったかどうかが争点であり、相当性と言うことにはならないと思う」と答えていました。  

ところが判決を読めば、これが「家永三郎及び被告らが、本件各記述が真実であると信じるについて相当の理由があった」に関する質問であったことが分かります。事前に判決がリークされていなければ記者が焦点を絞ってなしえない質問です。  

さらに、法廷内では、大江健三郎氏が弁護士に挟まれて、被告席前列に座っていることが目を引きました。勝訴がはじめから分かっていた可能性がここからも窺えます。判決内容が事前に分からず、万が一にも敗訴の可能性があるならば、大江氏を前面に座らせることはないでしょう。  

我々は今回、裁判所へのメールや、電話、署名等の活動をしませんでした。しかし被告側は他の政治闘争と同じように、徹底してそれをしていたようです。  

深見裁判長の身辺は大丈夫だったのかとさえ、疑念が生じます。


◆強力な証拠は多数存在する  

判決を読めば、はじめから結論ありきの内容だと言わざるを得ません。当方提出の証拠は決定的なものがいくらでもあるのに、それが取り上げられず、被告側は極めていい加減な証拠なのに、判決では、裁判官はそれを共感を持って受け入れています。  

例を挙げれば、赤松隊長の所へ自決に失敗した人々が押しかけ、治療を受けている。これが事実です。どうして自決命令を出しておいて、その治療をするのか。また、梅澤隊長が忠魂碑前に集まっている人々を解散させよと「解散命令」を出していたという有力な証言まで出ています。これは結審後、判決までに出た新証言なので、高裁ではこの証言も必ず審理されます。軍は、自決に失敗した人の治療をしていた。また、「自決をするな」という命令も出していたのです。  

あるいは、裁判官は日本軍のいないところでは自決は起こっていないと、事実無根な主張を取り上げていますが、米軍や、ソ連軍等の敵軍がいないところでも自決は起こっていません。逆に、日本軍がいても戦闘にならなかったところでは自決は起こっていません。  

敗戦と共に多数の方が自決されたが、軍は国民に自決せよと命令したのでしょうか。樺太真岡の女性電信員らの自決も、最初は軍命によるとされていました。このことは当裁判にも参考になることです。『鉄の暴風』発刊当時の米軍占領下ではすべて日本軍が悪かったことになっていたのです。  

今回は 裁判官の良心に基づく審理を全くあてにできない、法廷外の政治情況や、マスコミが形成する言論空間と、裁判所が連動する、司法の独立を傷つけた裁判だったと言わざるを得ません。  

高裁においては、裁判官がプライドを持って司法の独立を守り、丁寧で厳正な審理をしてくださることを望みます。丁寧で厳正な審理が為されれば、すでに明らかな数々の証拠により、当方が勝利するしかあり得ないからです。また、我々はそのような環境が醸成されるように、強力に運動を進めたいと思います。たとえどのような裁判官であっても、当方が勝訴するような闘いを、法廷内でも、法廷外でも繰り広げましょう。  

世界に向けて我が国のプライドを示すことができるような厳正な審理に基づく判決は、我々の運動によって作られるのです。高裁で必ず逆転しましょう

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