緊急シンポジウム報告
NHK「慰安婦」番組と朝日新聞報道を検証する

パネリスト:西岡 力氏(東京基督教大学教授)、
秦 郁彦氏(日本大学教授)、稲垣 武氏(評論家)
コーディネーター:藤岡信勝氏(拓殖大学教授)
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今年(平成17年)1月12日の朝刊1面で朝日新聞が、自民党の二人の政治家を名指ししてNHKの「慰安婦」番組(ETV2001)に「事実上の検閲」をおこなったと報じた問題は、朝日の虚報であることがほぼ明らかになった。その後は、朝日対NHKの大抗争に発展した。
この問題の根源は、2000年12月に開かれた「女性国際戦犯法廷」というカルトまがいの集会をNHKがまともな対象として取り上げたところにある。しかも、「慰安婦問題」なるものは、1990年代に朝日新聞が日本糾弾のために捏造した問題であった。
緊急シンポは、この問題をそれぞれの立場視点から調査研究してきた三人のゲストを招き、本会の藤岡代表がコーディネータとなって新聞テレビの反日報道の仕組みを徹底的に解明するためにおこなわれた。
まず、問題の番組である、ETV2001「問われる戦時性暴力」(2001年1月29日放送)を視聴した。
次に、最初の番組企画から削除されたと言われている、四つのシーン「中国人女性の証言」「東ティモール女性の証言」「元兵士の証言」「天皇有罪の判決」を視聴した。これには、集会の記録ビデオ「沈黙の歴史をやぶって―女性国際戦犯法廷の記録」を用いた。集会を主催した「『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネットジャパン)が制作し販売しているビデオである。
こうして、番組と集会の実態を参加者が知った後、パネリストが発表をした。
「朝日vsNHK」バトルの経過と本質について(藤岡信勝氏)
藤岡氏は、昭和天皇を「強姦と性奴隷制」で有罪とした集会の不当性と、放送したNHKの責任を指摘した。また、「慰安婦の強制連行」が90年代の朝日の虚構の産物であると知らしめるには、朝日に明確な訂正と謝罪をさせるのが一番重要だと述べた。
藤岡氏が今回の問題を解き明かした「朝日『番組改編』報道の『一石四鳥』とその帰結」は前号の『歴史と教育』に載っているので、参照していただきたい。
朝日が捏造した「慰安婦問題」(西岡 力氏)
西岡氏は、朝日新聞の「慰安婦問題」捏造の事情を明らかにした。
すべては、朝日新聞の91年8月11日付大阪版夕刊の歪曲、誤報に始まる。朝日はソウル発の記事のなかで、「女子挺身隊」の名で戦場に強制連行された人が出てきたと書いた。しかし、これは事実ではない。強制連行されたとされる女性・金学順さんは、17歳の時に、貧困のため母親に平壌のキーセン置屋に売られたと言っていたのである。
朝日の植村隆記者は、金学順さんの話を録音したテープを聞き、歪曲して記事を書いた。しかも、この誤報には、植村記者個人の利害も絡んでいる。植村記者は、訴訟を起こした「太平洋戦争犠牲者遺族会」の女性幹部の娘と結婚している。義母からの情報提供で、韓国よりも先にスクープを書いたのである。
金学順さんがキーセンに売られた事実は、91年の東京地裁への訴状に書かれており、韓国で最左翼のハンギョレ新聞にもインタビューが掲載されている。訴状を作成した高木健一弁護士は、この事実を私に指摘され、一切反論できなかった。
こういう人を、性奴隷だと言って引きずり出し、日本に連れてきて、裁判や講演をさせて彼女を利用した。ETV2001を見ると、金学順さんは生前も死後も名誉を犯されているのである。ソ連軍が終戦直後の満州で日本人婦女に対しておこなったような性暴力は裁かれるべきである。しかし、戦場における慰安婦の行為はこれとは異なる商行為である。それを性暴力と同じであるかのように言って、自分たちの政治宣伝に利用したのは朝日である。
ETV2001で、高橋哲哉・東大大学院綜合文化研究科教授は、「金さんの登場で歴史が変わった」と言っている。実際には、嘘が広まったという意味で「変わった」のである。
朝日新聞に第一に言いたいことは、誤報を検証し、謝るべしということだ。朝日の慰安婦問題の誤報がなければ、NHKはあんな番組を作ることにならなかった。 私は92年に『月刊文藝春秋』と拙著『日韓誤解の深淵』で詳細に立証して訂正を求めたが、朝日はこれに応じていない。それどころか、前回の教科書採択の時に合わせて、植村記者をソウルに派遣させている。嘘でも何でもいいから、日本が悪かったという路線でいく人事である。
「女性国際戦犯法廷」とその周辺(秦 郁彦氏)
〈秦氏は90年代からの「慰安婦問題」の裏側を明らかにした〉
私は「慰安婦問題」の節目節目に関わってきた。拙著『慰安婦と戦場の性』(新潮選書)に詳しく述べたが、ここでは五点を述べる。(以下の五点総てが、ETV2001で放送された内容や資料と関連している。)
・宮沢首相謝罪
92年1月11日付朝刊1面トップで、朝日は「慰安所に軍関与」という大誤報をした。記事は、吉見義明・中央大教授の史料(これら陣中日誌等は、軍関与の根拠になっていない)に基づいており、ETV2001もこれを放送していた。 私は91年暮れに、吉見氏が防衛庁図書館で史料を見つけたのに遭遇し、近く新聞に出ると言うので不審に思った。二週間以上も過ぎて、宮沢首相の訪韓の五日前に誤報が出た。訪韓中に、デモ隊が押しかける騒ぎとなり、首相は八回謝罪をした。 この時、各紙は追随報道した。特に、JapanTimesの数十万人の強制売春に日本政府が荷担したという記事は世界に伝えられた。
・ 慰安婦狩り
吉田清治氏は、著書『私の戦争犯罪』を83年に著し、自分は朝鮮・済州島(現韓国)で奴隷狩りのような強制連行をしたと述べた。朝日は吉田氏の著書を、91年から繰り返し取り上げた。私は済州島での現地調査を発表し、吉田氏の著書は作り話だと明らかにした。
・クマラスワミ報告書と河野談話
94年に、スリランカのクマラスワミが、国連人権委員会の調査で来日した。私も会い、英文で要点をまとめて渡した。しかし、報告書は、93年の河野官房長官談話を用いて「日本政府が認めている」という内容になっていた。私の文書は逆の文脈で使われ、補強材料にされてしまった。スリランカ大使館から訂正を要求したが、なしのつぶてである。 河野談話は、実際は玉虫色の内容でありながら、英訳では「慰安婦サイド」が喜ぶ表現になっている。内閣官房は談話に反対であり、談話を出す前夜に、私に意見を求めて手直しをしようとした。私は、表現を変える手直しをしたが、結果は全て不採用であった。河野談話は、「日本政府が認めている」と持ち出されるようになってしまった。
・アジア女性基金
95年にアジア女性基金ができ、07年に閉鎖する。国民の5億円の募金を配付するために、10数人の組織で毎年3〜4億円、計40億円以上の国費を費やした。認定作業は相手側に丸投げであった。この基金に事実関係を調べる調査委員会ができ、私は委員を二年やった。私は、女衒、ブローカーを見つけ出し、仕事の中味を証言させようとした。しかし、委員会の朝鮮半島担当二人に阻止された。私の「官憲の強制連行はなかった」等の結論を委員会に提出したが、結局無視をされた。
・女性国際戦犯法廷
01年1月26日に、ETV2001の私への取材依頼があり、28日にインタビューを収録した。永田浩三チーフプロデューサー(当時)の様子について、私は同年3月2日付朝日新聞で「上からの指示でいやいやながら来たという感じだった」と述べている。私は、意図的な編集をされる危険を感じた。そこで、「日本の検事団は弁護人を付けようと主張したが、南北コリア検事団が不要だと押し切った」というコメントは必ず放送する旨、念押しをして約束させた。ところが、収録後、カットしたいと言い出した。私は、カットすればこの件を公表すると言って、放送させた。
朝日報道の捏造報道の手口(稲垣 武氏)
私(稲垣)の在社当時からの、朝日の「自閉的特徴」に原因がある。
・朝日の不可解な回答
NHKの18項目の公開質問状に対して、朝日は2月17日に回答したが不可解なものであった。特に、本田雅和記者が松尾元放送総局長に、電話で「証言内容について腹を割って調整しませんか」「すり合わせができるでしょうから」と繰り返したことについて、記事の内容がどう違うのかを確認しようとしたと不可解な釈明をしている。さらに、取材相手がNHKとの関係で窮地に陥ることを防ごうとしたという回答にいたっては、朝日信者でも信じないだろう。取材対象が松尾氏であるのはNHKでは公然の事実で、抗議文も松尾氏自身の申し出により出したものである。
・ 独りよがりの決めつけ取材
こういう独りよがりの弁明は、自分たちさえ納得すればよいという自閉的組織になりおおせている証である。朝日記者には社内の評判だけが基準のものが多く、バッシングされるとますます閉じこもる。これは、自分たちは絶対間違っていないという強いエリート意識に由来する。「反共=悪」の共産党と同じ体質で、「反朝日=悪」なのである。
・ 裁判対策と録音テープ
朝日の回答には、法廷戦術を練っている節がある。例えば、本田記者は「安倍・中川両氏からもすでに取材している」と虚言を弄したと指摘され、朝日はそういった事実はないと言い切っている。おそらく、この取材冒頭部は録音テープがないのだろう。回答を書く際に、顧問弁護士とテープを聞き、慎重に裁判対策を立てていると思われる。実際には、安倍議員、中川議員とも虚言取材を指摘している。虚言取材は事実だろうが、証拠がなければ裁判で水掛け論になる。
・ 文脈の捏造
本田記者の取材手法は思い込みの決めつけ取材である。シナリオに合う材料だけ集め、材料がなければ異なる文脈を恣意的に結びつける。例えば、松尾氏が番組制作の一般論として、抗議などの圧力を感じても意見として聞く度量はあるなどと述べたら、文脈無視で「圧力はあった」としてしまう。本田氏に限らず、朝日ではこういう記者が優秀とされる。
・ 朝日批判は浸透している
十年前なら、NHKは天下の大朝日と正面切って対決する勇気はなかっただろう。朝日はバッシングされ、朝日もこたえている。権威が衰えた朝日に、NHKも腹をくくったのだろう。朝日は不祥事も続発している。例えば、04年に辰濃哲朗記者が無断録音したテープを流出させて退社処分をしたことなど。ちなみに、宮沢首相訪韓直前の大誤報を書いたのは、辰濃記者である。
【質疑応答】
高橋教授や松井やより・バウネットジャパン創立代表(故人)などが、「戦時性暴力」と「性奴隷制」という意図的に輪郭をぼやかした概念を創作した。これにより、ユーゴやルワンダの集団レイプと同じように、日本を糾弾しようとしている。このごまかしを正す必要がある。 フロアから、誤報でなく「虚報」とはっきり非難する用語を使って欲しいという提案があった。また、01年にETV2001が放送され、05年に蒸し返したのは、教科書採択時期を狙ったものだとの指摘もあった。
たいへん意義あるシンポジウムとなった。翌日の2月25日付産経新聞は、緊急シンポの詳細を報道し、各方面で反響を呼んだ。参加者の中には、朝日を長年購読してきたが、真実を知って購読をやめると憤慨していた方もいた。
なお、シンポジウムのメイン資料として、本研究会編「朝日新聞が捏造した『慰安婦問題』」(「歴史と教育」シリーズ2 クリオ情報企画刊)を配布した。97年までの朝日「慰安婦捏造記事」の全てが分かる。定価200円(送料別)である。
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