特集
『武士』を教える


 幕末まで、そして近代日本の精神を甦らせるために


自由主義史観研究会では一昨年来、「武士」を教える授業づくりに取り組んでいます。

時代劇の「悪代官」に象徴される、「非情な支配者=武士」と「虐げられる被支配者=農民や町人」といったイメージは教科書にまで反映されていたので、皆さんのなかには武士といえば「斬り捨て御免」や「生かさぬよう殺さぬよう」という残忍な印象があるのではないか。

しかし、実態を検討してみると、武士の教えとは私利私欲をきびしく戒め、質素を心がけること、また公共性を重視する自己犠牲の精神のうえに成り立っていたことが分かってきました。

単純な勧善懲悪の人情劇は昔から庶民の娯楽でもありましたが、何より、戦後の階級闘争史観が、武士の姿を傲慢で残酷な支配者像に固定化させてしまったのです。「武士道」は、世界中で賞賛される日本人の美徳でした。

「武士道とは死ぬことと見つけたり」ばかりが有名になってしまいましたが、アナクロニズムと敬遠していた人も、あるいは、最近のサムライ・ブームに魅せられた人も、一度、武士の本当の姿を垣間見てみませんか。




『今なぜ武士を特集するか
飯嶋七生/自由主義史観研究会会報『歴史と教育
』編集長

『武士の性格と日本の歴史の特色』
尾藤正英/東京大学名誉教授

『西洋人に武士道を知らせた新渡戸稲造』
上原 卓/自由主義史観研究会理事


『明治に生きる会津武士道・柴 五郎中佐』
服部 剛/自由主義史観研究会会員・横浜市公立中学校教諭

生徒感想文 『明治に生きる会津武士道・柴 五郎中佐』 を読んで

●M子さん/中学2年  
私はこのプリントを読んで、今まで自分が大きな勘違いをしていたということに気付きました。「大きな勘違い」とは、昔の日本人に対するイメージです。私は、昔の日本人はたくさん悪いことをしてきた、というような話を何回も聞かされました。そのおかげで、昔の日本人(戦時中の)に対する私のイメージは悪いものでした。しかし、歴史で習うことやプリントに記されていることから、日本兵たちはそんなにも否定 されるようなことをしていない事実を知りました。
日本という国は、今とても情けない国になりつつあるが、昔は他国からも高く評価されるような立派な国であったということに誇りを持つと同時に、まだ本当の歴史を知らぬ人々に「昔の本当の日本の姿」を知ってもらいたいと思いました。そして、それを私たち は見習わなければならないと思いました。

●S男くん/中学2年
欧米が世界を支配していた中で、柴五郎中佐の見事さで、日本の国が世界に高く評価さ れたことに感動した。
柴中佐の指揮に加え、「義和団の乱」の籠城戦で日本軍人が見せた規律の正しさや勇敢 さ、粘り強さが認められたことに誇りを感じる。
家にあって最近読んだ本に藤原正彦の『国家の品格』がある。その中に、慈愛・誠実・ 忍耐・正義・勇気・惻隠という武士道精神が書いてあったが、柴中佐を知った時、これを思い出した。惻隠とは、他人の不幸への敏感さの意味だ。僕たちに必要なものだと思った。

『戦国時代の家訓に見る『武士』のあり方』
(授業づくり最前線より)
 一郎/自由主義史観研究会会員・兵庫県立高校教諭

『武士の公共的性格 戦国大名 武田信玄を例に』
『江戸時代における武士の公共的精神』
(授業づくり最前線より)
飯島利一/自由主義史観研究会会員・國學院高等学校教諭

『幕末維新期のサイエンス武士道』
『「懸命」の授業』
(授業づくり最前線より)
吉永 潤/自由主義史観研究会会員・神戸大学発達科学部助教授

『小学生に「武士道」の授業をしたところ「忠義」の観念に強い興味と関心』
(授業づくり最前線より)
藤岡信勝/自由主義史観研究会代表・拓殖大学教授


『廃藩置県の授業・武士の自己犠牲で成立した近代的な統一国家』
(授業づくり最前線より)
齋藤武夫/自由主義史観研究会副代表・さいたま市立島小教諭


『日本のイメージを回復する「サムライ」』
(自由主義史観研究会会報『歴史と教育』08/2月号【咲都からのサイト】より)

赤野達哉/自由主義史観研究会北米支部・アメリカ在住




《白虎隊の忠誠心が日本の若者たちに受け継がれますように》…この一文を寄せたドイツ人リヒャルト・ハイゼは1902(明治35)年にドイツ語の教授として日本に招聘され、日本の武士道や美風に感銘を受けて、『日本人の忠誠心』と題した書物を残している。なかでも、会津魂の精華、白虎隊に心打たれ、19人の隊士が自刃した飯盛山に永眠することを希望し、今も山中に墓が建っている。

白虎隊は戊辰戦争の折、15歳〜17歳の武家の男子約340名によって組織された。いよいよ会津藩に官軍が迫るや、少年隊士は故郷を守るために必死の覚悟で戦場に散ったが、飯盛山に集結していた20名の隊士は鶴ヶ城炎上を見て城が落ちたと思い込み、最期を決意した。

この場面をハイゼは以下のように書いている。「少年たちにとって、人生はいかなる魅力をも失った。死など恐るるに足らず。否むしろ、死こそ魂の苦痛からの解放者なのだ。敗北は名誉を奪われた故人の屈辱に等しい。故郷の名誉は地下に葬られた。自分たちも後を慕って急ぐのだ」、と。そして、隊士らは身なりを整えてから一礼して、一斉に自決したのであった。

白虎隊に心惹かれた外国人はハイゼだけではない。飯盛山には、英国のボーイスカウトの創始者やローマ市民の名で贈られた石碑が現在も立っている。白虎隊の忠誠心にキリスト教の殉教者に通じる純潔と自己犠牲の精神を見たのだろうか。石碑の裏面にはイタリア語で「武士道の精神に捧ぐ」と刻まれてあった。しかし、第二次大戦の後、武士道精神の復活を怖れた占領軍によって削り取られてしまった。ハイゼの詳細については、その著書『日本人の忠誠心と信仰』(草思社)に詳しく書かれている。




 



「武士」 とは公のために身命を賭すことのできる人間である、と私は定義したい。私の選んだ 『武士』 ベスト3は、吉田松陰、伊藤博文、阿南惟幾である。吉田松陰の伝記を読んで感銘をうけたのは小学6年生のときであった。爾来、年齢を重ねるにつれても、松蔭の像は私のなかでますます大きくなっていくのであった。伊藤博文や阿南惟幾は世間ではあまり評判がよろしくないようだ。しかし、この二人がいなかったら現在の日本は存在しなかったかも知れないほどの偉業をなし遂げた人物たちであると、私は強く思っている。・・・・・・・・・・・・詳細・解説へ


理想とされている武士というのは、誰しもが数々の「徳」を備えています。今回、私が選んでみました三人も、それぞれに各々の「徳」があるのです。まず、鎌倉時代に元の軍を撃退した北条時宗は「勇気」、「決断」、そして「責任」の「徳」を具現していると言えます。明治時代に沈ずみゆく潜水艇に対して、最後まで任務を遂行した佐久間 勉は「勇気」、「決断」、「責任」、そして「愛情」を。そして、同じく明治時代の日露戦争で活躍した乃木希典は「責任」、「清廉」、「けじめ」、そして「忠義」を具現しているのだと思います。・・・・・・・・・・・・詳細・解説へ


将棋の対局の投了場面で、負けた側が何をか言って頭を下げ、勝った側も済まなそうに礼を返す。いかにも日本人らしい振舞です。最近のスポーツでは、1点を取ったぐらいではしゃぎすぎです。柔道で勝った選手のガッツポーズを見て唖然としました。これは日本人らしい振舞ではありません。日本人らしい振舞の視点から今回の三人を選びました。三浦は誤解されている人物なので、名誉回復をしたい。明石は台湾で高く評価されているのに日本ではあまり知られていません。こうした日本人をもっと知るべきです。・・・・・・・・・・・(詳細・解説へ


人は決して一人で生きているのではない。家庭や地域社会、国などの共同体のなかで生きているのだ。個の利益、権利のみを主張する今日の時代にあって、共同体の意識を持ちながら今を活ききる人々こそが武士であると考えている。時代の変わり目に漁師から西洋を知る重要人物になったジョン万次郎、教育に生涯をかけた森 信三、地域住民の安全を守り続けた宮本邦彦警部(東武東上線ときわ台駅で、線路に立ち入った女性を保護しようとして殉職)を、我々にとっての身近な存在の「武士」ベスト3として推薦したい。・・・・・・・・・・・詳細・解説へ

 






若き日の工藤中佐




惠氏著書のカバー
大東亜戦争中、ジャワ島北方のスラバヤ沖で撃沈された英海軍艦の漂流者400名以上を、武士道精神に則って救助した日本軍の中佐がいた。その人、工藤俊作中佐は当時、駆逐艦「雷(いかづち)」の艦長。しかし、戦後になっても工藤中佐がこの救助劇について語ることは一度もなかった。そのため、救われた一人だった元英国海軍中尉、サムエル・フォール卿が工藤中佐に会おうとして平成15年に来日するまで、日本でこのことを知る者はほぼ皆無に等しかった。



     駆逐艦「雷」        救助された英海軍兵    フォール卿
残念ながら工藤中佐は既に亡くなっておられたので、フォール卿との再会は果たされなかった。けれども、工藤中佐の行方探しを依頼されていた惠 隆之介氏(評論家・元海上自衛官)が、この感動の物語を著書・『敵兵を救助せよ!』(草思社)にまとめている。是非とも、御一読いただきたい!

「日本の武士道 1」/テレビで紹介された駆逐艦「雷」による英兵救助物語の再現動画・第1部(約8分)。

「日本の武士道 3」/テレビで紹介された駆逐艦「雷」による英兵救助物語の再現動画・最終部(約7分)。
「日本の武士道 2」/テレビで紹介された駆逐艦「雷」による英兵救助物語の再現動画・第2部(約6分)。

「日本の誇り高き武士道−敵兵を救助せよ」/上段・左の三つの動画の短縮版。お急ぎの方はこちらを。



『武士道』
新渡戸稲造・奈良本辰也著 三笠書房
武士道の最高の支柱である「義」、人の上に立つための「仁」、試練に耐えるための「名誉」…本書は強靱な精神力を生んだ武士道の本質を見事に解き明かしている。武士は何を学び、己を磨いたかを知ることは現代人にとって重要である。日本の精神的支柱である武士道の真髄を記した新渡戸稲造の名著を、平易な文体で新訳

『「武士道」解題−ノーブレスオブリージュとは』
李 登輝著 小学館
100年前に書かれた新渡戸稲造の『武士道』には、現代の日本人が忘れてしまった普遍的思想が貫かれている。その深遠な日本精神を、戦前日本の教養教育を受けて育った台湾の哲人政治家が、古今東西の哲学知識を総動員して解説した。ノーブレス・オブリージュ―高貴な身分の者に課せられた義務。著者は「武士道」の本質をそこに見出す


『武士道と日本型能力主義』
笠谷和比古著 新潮社
固定的な身分社会と思われがちな江戸時代…実は藩主が家臣に更迭される「主君押込」や、有能な下級武士を抜擢する積極的な能力主義がうまく機能していた。武士道の根本規範は減私奉公ではなく、自立の精神と組織の繁栄追及であることを明らかに。徳川吉宗や上杉鷹山の改革、幕末の幕府官僚等を例に、新しい武士像を提示する組織論

『これだけは伝えたい−武士道のこころ』
名越二荒之助・拳骨拓史著 防衛弘済会
日清・日露戦争から太平洋戦争まで、日本の精神風土たる武士道はどう貫かれたのか…新渡戸武士道の忘れものも含め、多くの感動秘話を取り上げる。教科書には載っていない日本の近現代史とともに、日本人の奥行が満載の書。軍人達のエピソードから武士道を説き、『敵兵を救助せよ』の工藤艦長、『バルトの楽園』の松江豊寿等が紹介されている

『葉隠−武士と「奉公」』
小池喜明著 講談社
武士道の聖典とも言われる山本常朝『葉隠』には、なぜか「殉死」の語はなく「追腹」であり、「武士」の語の多くが「奉公人」に変えられている。また『葉隠』の存在は、実は江戸時代を通じて秘せられてきた。常朝の生い立ちと思想を深く読み込むことによってこれらの謎を解き、通説を大胆に問い直した力作。『葉隠』を読むための入門書に

『武士の思想』
相良 亨著 ぺりかん社
常に死と向きあった武士の生き様。武士とは、日本人にとって理想的な人間像だった。戦国時代と近世の“武士の思想”を論じた文章六篇を収録。下剋上に象徴される戦国武士の「恩」や「忠」といった問題から、近世の儒教と結びついた山鹿素行、佐藤一斎、大塩中斎、そして「葉隠」等、武士の主要なテーマをすべて扱っている

『使ってみたい武士の日本語』
野火 迅著 草思社
150年前まで日本を覆っていた「武士の世」で話されていた、味わい深い言葉の数々。声に出して使ってみれば、日本語本来の豊かさ・面白さが身にしみる。卒爾ながら(突然のことで失礼ですが)、それは重畳(大変けっこうなことだ)、異なことをいう(また妙なことを)等、「極上の日本語」を紹介する。武士を言葉から理解するための入門書。

『武士の誕生−坂東の兵どもの夢』
関 幸彦著 日本放送出版協会
武士は、草深い東国の田舎から都の堕落した貴族を打ち倒すために現われたのか?武を生業とした貴族社会の一員だったのか?古代から中世への転換期にあって変革を担い、中世的社会の原形を形成し、「日本国」を生み出す原動力となった武士。700年にわたる武家政権の原点としての武士誕生の瞬間を問う、活況を呈する武士論の決定版

『日本人の心−武士道入門』
山本博文著 中経出版
武士道の価値観や美意識が現代にどのように受け継がれているのかを、実際の武士の行動や江戸時代に書かれた武士道書を分析することで、東京大学史料編纂所の山本教授が解明。給料や出世の決定方法や夫婦関係の実際等、武士ワールド全体も把握できる。常に自分を律する武士の潔い生き方が伝わってくる、読みやすい一冊


『武士ズム』
堀辺正史・小林よしのり著 小学館
SAPIO別冊・『わしズム』で大好評の連載を単行本化。 ゴーマニズム宣言の漫画家・小林よしのり氏と、自らの武道・骨法を極めた格闘技界随一の理論家とされる堀辺正史氏による異色対談。「武士の処世術・武備恭順とは何だったのか?」から、「日本の植民地化を防いだ幕末志士の交渉力とは?」まで、近現代における武士道をも考察。




戊辰戦争当時の長岡藩家老・稲垣平助の六女である杉本鉞子(えつこ)をご存知だろうか。

明治19年に15歳で単身上京し、23歳で結婚のために渡米。和骨董店を営んでいた夫の死後に一時は日本に帰国したが、再び二人の幼い娘達を連れて渡米。その後、日本文化について書くライターとなり、やがてはコロンビア大学の講師にまでなった女性である。彼女が英語で執筆した“A Daughter of the Samurai (武士の娘)”はアメリカでベストセラーとなり、7ヶ国語に翻訳された。新渡戸稲造の『武士道』同様、諸外国に武士の精神について広めたこの本は鉞子の半生を綴ったもので、当初は雑誌 “Asia”で連載されていたシリーズに加筆した内容。武士道は古いという風潮が強まっていた明治期においても、侍の精神を疑うことなく守り続けていた稲垣家で厳格に育てられた鉞子の物語は、子々孫々と受け継がれてきた日本の倫理観、美意識、そして叡智に溢れている。

稽古(勉強)の際には「肉体の安逸」を避けるために正座して微動だにせず、床につく時さえも身を引き締めねばと「きの字」に身体を曲げて眠るという、武家娘としての躾け。その一方で、読書好きの祖母が語ってくれた神代や英雄豪傑の物語に心躍らせつつ、綿入れを温めたり美味しい甘酒を作ってくれる乳母らの優しさと、長岡の豊かな自然に包まれて鉞子は育った。

「…エツ坊や、住むところは何処であろうとも、女も男も、武士の生涯には何の変りもありますまい。御主に対する忠義と御主を守る勇気だけです」という祖母からの言葉を守るかのように、アメリカに渡って以降もずっと和服を愛用し続けた鉞子。西洋の長所を身につけながら、厳しくも愛情に恵まれた少女期に培われたアイデンティティーを生涯見失うことのなかった彼女の著書は、海外だけでなく現代の日本人にとっても、そのルーツを綴った貴重な文献なのだ。(※写真右上は信濃川畔にある鉞子の記念碑)





【注意】下記のリンクは特集関連情報を皆様にご紹介する主旨で選ばれています。リンク先における全ての記載内容を、必ずしも自由主義史観研究会が支持しているとは限りません。

「武士の時代」
 戦国、江戸等の武士の歴史を楽しく分かりやすく伝える有名人気サイト

「そうだったのね!日本史」【ろーえん先生の講義】
 歴史好きを増やすためのサイト内の、講義「武士という生き方」シリーズ

「日本の世界一」【日本精神の源泉を世界に伝えた 新渡戸稲造】
 様々な日本の世界一を集めたサイト内の、新渡戸『武士道』の功績詳細

「東京ファイナンシャルプランナーズ」【FPセンスFPマインド「武士の心」】
 東京ファイナンシャルプランナーズ会長の、山田氏によるビジネス武士道

「全日本剣道連盟」【剣道について・歴史】
 全日本剣道連盟公式サイト内の、剣道と武士道の歴史についての解説

「WEB版岸波通信」【最後の会津武士】
 エッセイ・サイト内の、武士精神を守ろうと16歳で死んだ郡 長正の紹介

「萬晩報」【「どら平太」に失われた日本人の精神をみる】
 分野不問の記事サイト内の、映画『どら平太』における武士精神のコラム

「藤岡 弘オフィシャル・サイト」【藤岡 弘の一刀両断】
 「責任」「武士道ブームが最後のチャンス」等、俳優の藤岡氏によるコラム

「iza:イザ!」【“侍言葉”変換サイトが静かなブーム 「これは異なことを」】

「MSN産経ニュース」【戦国武将ブーム したたか、男気、理想の男性像】




《「マツヤマ!」と叫んで手を挙げてくるロシア兵を撃ってはならない》…このような命令が、前線の日本軍に通達されたという。

時は、日露戦争(1904)のさなか、ロシア俘虜が国内数十カ所に移送されてきた。そのなかのひとつに愛媛県の松山俘虜収容所があった。収容所では傷病者は手厚く介護され、俘虜達が「二度と戦争に参加しない」と誓えば、市内の温泉や繁華街に出かける自由も与えられていた。その噂が瞬く間に本国に広がり、「マツヤマ!」と叫びながら日本に投降して来るロシア兵が後を絶たなかった。

それから10年後、第一次大戦(1914)では日本の対戦国となったドイツの将兵が俘虜として日本にやってくることになった。彼らを収容するため、徳島県に板東俘虜収容所が建設され、所長には松江豊寿が就任した。松江は、俘虜を前に「諸君は祖国の勇士であり、私は人道と博愛と武士の情けをもって接する」と訓示し、彼らを大いに歓喜させた。 ここでは、サッカーやテニス、ボーリングを楽しむことが許され、ドイツ皇帝の誕生日やクリスマスにはパーティが開催された。外出が許可されたドイツ兵は、地元住民とも交流しては祖国の技術や文化を披露し、親しみを込めて「ドイツさん」と呼ばれている。彼らがオーケストラの楽団を結成し、日本で初めてベートーベンの交響曲第九番を演奏したことは、『バルトの楽園』という映画にもなった。

終戦後、帰国したドイツ俘虜は、板東を懐かしんで「バンドーを偲ぶ会」を結成する者、また板東を再訪して地元民と旧交を温める者が数多くいたという。「マツヤマ」「バンドー」は、「武士の情け」という日本人の美徳を世界に広める合言葉となった。松江豊寿については下記の書籍等で知ることができる。(※写真右は徳島にある松江の顕彰碑)
★松江と「武士の情け」を教える高校授業案(飯島利一)はこちらから。

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