「マスコミの誤報を正す会」が出来るまで

藤岡信勝(自由主義史観研究会代表・拓殖大学教授)

私が今まで主体的にコミットしてきた団体とその中での役職は次の通りであった。

・新しい歴史教科書をつくる会(会長)
・自由主義史観研究会(代表)
・南京事件の真実を検証する会(事務局長)  

私は元来、一つのことに取り組むと他のことには頭が回らないたちなので、三つもの団体の責任ある役職を兼ねるなど本来は無謀なことである。当然ながら能力の限界を上回り、どれも十分にこなすことができず、関係者にご迷惑のかけ通しである。それなのに、この11月、何と四つ目の団体を立ち上げてしまった。その団体名と役職は、次の通りである。

・マスコミの誤報を正す会(事務局長)  

やむにやまれぬ思いでこういう仕儀に至った経過を書かせていただき、言い訳とご理解・ご協力のお願いとしたい。  

9月29日、沖縄の宜野湾海浜公園で開かれた「教科書検定意見撤回を求める沖縄県民大会」の参加者数を、各紙は「11万人」と報道した。主催者発表を鵜呑みにした数字である。「11万人」という数の圧力は、たちまち政治的効果を発揮した。政府・文科省は教科書会社の訂正申請を認める方針に転換したのである。  

新しい歴史教科書をつくる会は、10月4日、渡海文科大臣あてに「意見書(その2)」を提出し、あわせて文科省にて記者会見を行った。その際、私は、「11万人」はフィクションであり、実数は2万人程度ではないかという説を紹介した。するとその日の夜のテレビ朝日のニュースステーションで私の「2万人」発言を取り上げ、古館伊知郎キャスターが、「かりに2万人だったとしても、何がいけないんでしょうか。人数の問題ではありません。沖縄の人たちのふかーい、ぬぐい去れない悲しみとどう向き合うかではないでしょうかね」と発言した。  

冗談ではない。「11万」と「2万」では政治的意味が全く異なる。沖縄の集会の動員目標は「5万人」だった。それを、1995年、沖縄の少女が米兵に暴行された事件の時に開かれた県民大会8万5000人を上回る参加者で、沖縄復帰後最大規模の集会であると関係者は宣伝していたのである。政治とは数の問題だ。だからこそ、福田総理はこの大会に言及し、文科省は方針を変えたのだ。  

記者会見で私が「2万人」と言ったのは、南木隆治氏が主催する情報交換のメーリングリストで、日本会議熊本の役員で自由主義史観研究会の会員でもある多久善郎氏が、沖縄の現地集会をウォッチした報告を読んでいたからである。詳細は本号の多久論文をお読みいただきたい。また、東京の警備会社テイケイが完璧な調査を行い、実数は1万9000から2万人にすぎないことがわかった。もはや「11万人」は大誤報と言うべきである。誤報は訂正されなければならない。  

11月1日午後、「南京事件の真実を検証する会」会長の加瀬英明氏と私は衆議院第二議員会館の中山成彬議員の事務所を訪ねた。12月6日に開催する「南京陥落70年国民の集い・参戦勇士が語る『南京事件』の真実」のご案内状を差し上げるご挨拶のためである。その折り、中山氏から新聞が誤報を訂正しないというお話を伺った。10月17日午前、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える国会議員の会」の役員会が開かれた。その後の記者会見で同議連の中山会長は、沖縄集団自決に「軍の命令、強制は当然あったと思う」と発言したとする記事を共同通信が配信した。ところが中山氏はそんな発言はしておらず、そのように認識もしていないというのである。  

それから「11万人」の話になり、加瀬氏が「これは誤報である。新聞社は訂正すべきである」とおっしゃった。私もかねてから考えていたことだったので、同じ思いをしている人は意外に多いのかもしれないと思い至った。それからは一瀉千里のごとき勢いで話が進み、一週間後の11月8日に、議員会館で記者会見を行った。役員は次の通りである。

(代表)加瀬英明 (事務局長)藤岡信勝
(委員)石原萌記 井尻千男 稲垣 武 植田剛彦 高山正之 中村 粲 西村幸祐 花田紀凱 藤田裕行 水島 総 三堀 清 宮崎正弘 三輪和雄 茂木弘道  

会は主要各紙に次の公開質問状を発送した。11月15日をめどに回答を求めている。  

【質問1】9月29日の沖縄県民集会について貴紙の第一報では、「主催者発表によれば11万人」「11万人(主催者発表)」などと報道されたと認識しておりますが、間違いはございませんか。  

【質問2】しかし、この数字は、東京の警備会社テイケイの調査によって、実際は2万人以下であることが疑問の余地なく立証されたと考えますが、貴紙のご見解をお聞かせ下さい。

【質問3】2万人の集会を11万人と報道することは明らかな誤報であり、しかもその誤報による数字が現実に教科書検定への政治介入を招いた事実に鑑みて、何らかの訂正が行われるべきであると考えます。すなわち、1.訂正記事を出すか、2.独自の検証記事を出すか、3.上記警備会社の調査を報道・言及・引用するなどして、読者の誤解を解くことが報道機関の責任です。貴紙は、上記1、2、3のどれかのフォロウをなさいましたか。  

【質問4】上記のフォロウがなされていないとしたら、報道機関としての読者に対する責任を放棄したものと考えますが、貴紙の見解をお聞かせ下さい。また、私どもとしては、そのフォロウを早急に要請いたします。この点に関する貴紙の方針をお聞かせ下さい。

どんな回答が来たのか、後日報告したい。

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