「ドル」基軸通貨見直し論が高まる

オバマ米大統領の一般教書演説:サブプライム問題以降のリセッションにっはいった米国経済。オバマ大統領は民主党逆風の中で苦悩しているようだ。どうなるのか強い米国と強いドル。FX投資家なら誰もが注目する一般教書演説をご紹介したい。オバマ米大統領は、25日の一般教書演説で、米経済が回復し、再び拡大していると強調し、超党派の取り組みを訴えた。予算の一部凍結を表明し、巨額の財政赤字削減に野党・共和党と共に取り組む姿勢も示し、国民の高失業率や財政赤字増加への懸念に応える。

「ドル」の基軸通貨としての見直し論が高まる

1月に韓国・ソウルで開催された主要20力国・地域(G20)首脳会合の直前、世界銀行のゼーリック総裁が英フィナンシャルータイムズ紙に寄稿した論文が話題になった。この中で同総裁は、1971年以降の。ブレトンウッズ体制(ドル基軸の変動相場制)を引き継ぐ新たな通貨体制について、「ドル、ユーロ、円、ポンド、そして国際化と資本自由化に向かう中国人民元を含めることが必要」と指摘。その体制においては、「インフレやデフレ、将来の通貨価値に対する市場予想の国際的指標として金を採用することを検討すべき」と提言した。

 

米国経済

 

共和党系とはいえ、国務副長官なども歴任した元米政府高官であり、世銀総裁という影響力のある人物の提言だけに国際的な物議を醸した。元財務官の内海孚氏はこの論文を読んで、プラザ合意後のドル急落の安定を目指した87年のルーブル合意のときを思い出したという。

 

会議前、米国政府から大蔵省(現財務省)ヘベーパーが回ってきた。それは、「為替相場にゾーンを決めて安定させる。その際に金やその他の商品価格を参照するような制度がいいのではないか」という内容だった。結局、商品価格参照については米国から何の明快な説明もないまま、合意内容から除外されたという。今回の論文との共通性を考えると、商品価格については当時、米財務省スタッフだったゼーリック氏が書いた可能性がある。

 

金の指標性を重視するのが持論としても、その真意は何なのか。同総裁は昨年9月の講演でも「世界の支配的な準備通貨としてのドルの地位を当然視するなら、米国は間違っている」「将来、ドルに代わるものが現れる可能性は一層高まるだろう」と述べ、代替候補としてユーロや人民元、国際通貨基金(IMFのSDR(特別引出権)を挙げている。 こうした発言と考え合わせると、同総裁は基軸通貨ドルに対する信認低下とその限界に対して警告を発したものと受け止められる。そして、通貨の代替資産としての金の価格局騰は、ドルの信認低下を反映したものであり、ドル基軸体制の見直しが必要と訴えているものだろう。金の指標化はむろん、「金本位制への復帰」とは違う。通貨供給量を金の保有量に制限する金本位制は、現代の巨大化した国際マネー経済の下ではあまりにも非現実的。

ドルの実効レートは最低を割り込む懸念

同総裁も「金本位制への復帰、などという古い見方を人々は捨て去るべき」と海外メディアに述べている。実際、ドルの基軸通貨としての相対的地位は徐々に低下している。基軸通貨の役割には@国際間の貿易取引や資本取引での「決済通貨」、A各国通貨の価値基準や商品の単位としての「基準通貨」、B外貨準備や保蔵手段としての「準備通貨」があり、これらの役割を果たすには通貨価値安定や発達した金融市場、自由な対外取引などが条件とされる。

 

その点、たとえば世界の外貨準備のシェアを見ると、今年4〜6月期にドルは62・1%で、10年前の72%から低下。一方、ユーロは10年前の17.5%から26.5%へ上昇した。また、世界の債券発行残高の通貨別シェアは今年6月末現在、ドル建ての40%に対し、ユーロ建ては43.4%と逆転。ドルー極体制とはいえなくなりつつある。

 

何より問題なのは、基軸通貨としての条件である「通貨価値の安定」が大きく揺らいだことだ。下のグラフのようにドルの実質実効レートは現在、2002年のピークから約25%減価し、過去最低水準にある。

 

ドルの実質実効レートは過去最低水準まで減価
実効レート表

 

同じく最低水準にあった95年当時のドル安は、対日貿易不均衡是正のための米国による為替調整の色彩が強かった。米国景気は拡大基調にあり、金融政策五則年から引き締めに転換。米政権は95年に入ると、「強いドル政策」へ舵を切った。

 

一方、現在は米国経済が未曾有のバブル崩壊危機の後遺症にあえぎ、第2弾の巨額量的金融緩和を発動したばかり。金融政策の立ち位置は95年と正反対だ。オバマ政権も「5年で輸出倍増、200万人雇用創出」を標榜。ドル安容認姿勢と市場は受け止めている。ドルの地合いは95年当時と比べものにならないほど弱く、実質実効レートが歴史的な下値支持線を割り込む危険性は高い。

次なる体制が見えぬ中ドルの信認低下が進む

こうした状況で基軸通貨見直し論が高まるのは至極当然だ。膨大な外貨準備をドルで抱える中国の中央銀行総裁らが、sDRを外貨準備にすべきと主張するのもドル安を放置する米国への牽制の意味合いが強い。中国が現実に準備通貨をDRに代えればドルは暴落し、中国自らの外貨準備が大きく目減りしかねない。実際には採りえない策だ。
G20蔵相会議

ドルに次ぐ国際通貨の地位を高めつつあるユーロにしても依然、ドルの代替としては力不足。ギリシャ、アイルランド危機で露呈したように、域内格差や財政主権の分裂といった内部矛盾が地位向上を妨げている。円はローカル通貨の域を出ず、中国人民元に至っては現状、完全な交換性や変動性も欠く「71年以前の通貨」でしかない。

 

つまり、各方面から湧き起こる基軸通貨見直し論は現実的な策があるわけではなく、ドルヘの警告、牽制の域を出ていない。次なる通貨体制の青写真が見えない中で、基軸通貨ドルが地盤沈下するという、極めて不安定な状況が続いている。